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フォルクスワーゲンとBMWの決算から見るドイツ自動車メーカーの逼迫度
フォルクスワーゲン(VW)グループが2025年3月11日に発表した2024年の決算は、売上高(3250億ユーロ=52兆円 ※)は対前年比で微増(+1%)でしたが、営業利益(191億ユーロ=3兆円)は高水準の研究開発や設備投資、中国市場での販売の落ち込み(−9.5%)などの影響で−15%の減益となりました。また、同月14日に発表されたBMWの決算も、EV販売は伸びたものの、中国市場の不振などで売上高と営業利益ともに減少しています。EVやSDVへの開発投資や国内メーカーとの競争が激化する中国市場の対応を迫られている両社の現状を決算から探ってみます。※:1ユーロ=160円で計算(タイトル写真:...
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トランプ関税に振り回される自動車産業。落としどころはどこなのか
2025年2月28日にホワイトハウスで計らずもテレビカメラの前で演じられたトランプ大統領とゼレンスキー大統領の応酬に世界は驚愕しました。ウクライナ戦争の停戦が遠のいて大きな落胆と幻滅を経験した米国の同盟国や隣国は、今度は「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ大統領の関税政策に右往左往している状況です。3月4日に発動されたメキシコとカナダに対する25%の関税は、翌日にはUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)で非関税となっている自動車製品は1カ月の猶予措置が発表され、翌々日には同協定の対象品全てに猶予が拡大されるという目まぐるしい展開で、産業界や株式市場は混乱しています。果たしてこの関...
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新型CLAは3月下旬に発表。GLCやSクラスなど新世代製品群の到来を告げたメルセデス・ベンツ投資家デー
2025年2月20日、メルセデス・ベンツがドイツ3大自動車メーカーのトップを切って2024年の決算を発表するとともに、投資家デー(キャピタルマーケットデイ)を開催しました。2024年の業績は、売上高が1456億ユーロ(23兆3000億円、前年比−4.5%)、税引き前利益(EBIT)が136億ユーロ(2兆2000億円、前年比−30.8%)の減収減益でしたが、2025年発売の新型CLAを皮切りに、2027年までに30車種以上を投入すると同時に、生産能力の10%カットを含むコスト削減により、8%に低下した乗用車部門のROS(売上高利益率)を二桁に回復する計画です。また、長期的なEVシフトには変...
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EV強制よりトランプ関税の方がマシ? −米国自動車販売店の本音とは
米国では、2025年2月1日にトランプ大統領がカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税をかける大統領令を出したものの、すぐに1カ月延期するなどさっそく予測できない展開で市場は混乱していますが、自動車ディーラーはトランプ大統領下でのビジネスをどう見ているのでしょうか。米オートモティブニュース(AN)が124社の販売店に対して調査した結果や、NADA(全米自動車ディーラー協会)の年次総会に合わせて、AN紙が行った各ブランドの販売店協議会の会長インタビューなどから読み解いてみます。(タイトル写真は、2024年40万台を米国で販売したホンダCR-Vを生産するカナダのオンタリオ州アリストン工場。...
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2024年の欧州(EU)のEV販売台数はマイナス5.9%と失速。今年厳格化するCO2規制の緩和はあるのか?
欧州自動車工業会(ACEA)は、2025年1月21日、2024年(1〜12月)の乗用車販売台数を発表しました。スイス、ノルウェーなどのEFTAとイギリス(UK)を含めた総販売台数は、前年比+0.9%の1296万台。EVはマイナスとなる一方、ハイブリッド車は+19.6%と躍進しました。2025年からEUのCO2排出基準が2021〜2024年比で約15%厳しくなるため、多数のメーカーが未達成となり1gにつき1台あたり95ドルという多額の罰金の支払いを余儀なくされる可能性があります。自動車メーカー団体は規制の緩和を要請しており、EUも検討に入るようですが、果たしてどんな対策が打ち出されるでしょ...
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NVIDIAは自動運転でも世界最強なのか。CES 2025レポート(前編)
2025年1月8日(日本時間)、米ラスベガスで開幕したCESは、予想どおりAI一色の様相を呈していました。スマートホームやSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)など、メガOEMやティア1サプライヤーの展示内容そのものは前年と大きくは変わらなかった印象ですが、2024年よりも一層AIにフォーカスした印象です。自動車においては、大規模言語モデル(LLM)と生成AIによるIVI(イン・ヴィークル・インフォテイメント)と自動運転(AV=Autonomous Vehicle)への流れが加速し、これから実装されていく技術がより明確になってきました。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの基...
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VWの労働協約が合意。大規模な工場閉鎖は免れるも、ゴルフはメキシコ生産に。賃金では労組が大きく譲歩
日本はホンダと日産の経営統合の話題で沸騰中ですが、2024年9月から4カ月にわたって交渉を続けてきたフォルクスワーゲン(VW)と同社労使協議会及びドイツ金属労働組合(IGメタル)の労働協約交渉が、5日間70時間にわたるマラソン交渉の末、先週金曜日(2024年12月20日)に合意に至りました。経営側、労組側ともに譲る気配を見せず2回の警告ストライキもあり、「大規模ストライキ突入」も不可避かと思われましたが、ドイツ自動車産業の直面する厳しい環境下で組合側が予想以上に譲歩した形で決着しました。組合側は今回の闘争が2025年まで長引くことの悪影響を考慮、経営側も1日のストライキで1億ユーロ(16...
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ステランティスのカルロス・タバレスCEO突然の辞任は、独裁化した辣腕トップの末路か
ステランティスのカルロス・タバレスCEO辞任の発表は、クリスマスに向けて気分も浮き立ち始める12月に入った矢先のことで関係者を驚かせましたが、波乱に満ちた2024年と自動車業界が直面している苦難を象徴しているようです。そのわずか2カ月前、ステランティスは米国市場の在庫圧縮による費用を理由に大幅な減益見通し(2桁だった営業利益率を5.5〜7.0%へ修正)を公表、タバレス氏はその責任を問われてか任期の切れる2026年初頭に円満に退任と発表されたばかりでした。それがなぜ急転直下の辞任に至ったのか、現地の報道などから探ってみます(写真はステランティス)
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中国ブランドシェア6割を突破の一方で、同質化が進む中国市場の最新事情
2024年11月15日から、中国の広州モーターショーが開幕しました。海外からの注目度こそ隔年で行われる北京や上海のモーターショーに劣りますが、22万平方キロメートルの展示面積に1100台が並ぶ規模を誇ります。スマートフォンで有名なシャオミ(小米)や、ファーウェイ(華為)がセレスグループと開発するAITOなどの「新々勢力」ブランドが人気を博し、10月の乗用車販売では中国ブランドのシェアはついに65%に達しました。一方で、同じような半導体やソフトウェアを使い、デザインも似通ったものが増えて「スマホのように、外観と機能の違いはますます小さくなっている」という見方も出ています。そのあたりの動向を...
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【海外トピックス】トランプ返り咲き後の世界はどうなる。EVは大失速?
2024年11月5日の米国大統領選挙の結果、ドナルド・トランプ氏が130年ぶりに2期目の防衛に一度失敗した後に大統領に返り咲くことになりました。選挙当日まで、鍵となるスウィングステートを含めて民主党候補のハリス副大統領との大接戦が予想されましたが、蓋を開ければ、ペンシルベニア州やミシガン州などかつて「青い壁(ブルーウオール)」と言われた民主党の牙城を含め7州全てで3ポイント前後の差をつけて勝利しました。隣国メキシコを含め外国からの輸入品に高関税をかける、EV購入支援策を廃止すると主張しているトランプ氏の第2次政権で米国はどのように変化するのでしょうか(タイトル写真は大統領選挙の勝利宣言に...
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【海外トピックス】メルセデス・ベンツの利益半減、VWはドイツ3工場を閉鎖の衝撃度
先週末、メルセデス・ベンツが発表した今年第3四半期の決算では、純利益が前年同期比で54%減少し、2024年通年の営業利益率予想も8.5%(昨年は12.6%)へ下方修正しました。また、ポルシェも1〜9月の売上高が−7%、営業利益率は17%→14%に減少しています。背景には、中国市場での高級モデルの販売不振と、世界的なEV販売の低迷があります。またフォルクスワーゲンは、ドイツ工場3カ所を閉鎖し、従業員の賃金を一律10%カットして2年間凍結する方針であることが明らかになりました。欧州ではコロナ前から需要が200万台減少しており、VWブランドは50万台の過剰生産能力を抱え、労務費やエネルギーコス...
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【海外トピックス】テスラが「サイバーキャブ」をお披露目。しかし具体的内容を欠き市場は落胆
テスラは、かねて8月に発表するとしていたロボタクシーを2024年10月10日にハリウッドのワーナーブラザーズの撮影スタジオを借り切ってお披露目しました。車名は「サイバーキャブ(Cybercab)」で2026年に生産を開始し、3万ドル以下の価格で販売を見込みますが、投資家は2年先というタイミングや車両の詳細などが明らかにされなかったことに落胆を示し、翌11日にテスラの株価は9%近く下落しました。“We, Robot”と題されたイベントでは、他に20人乗りの小型シャトルバスの「サイバーバン」や、ヒューマノイドロボット「オプティマス」が登場して参加者をもてなしましたが、サイバーキャブのプロトタ...