フォルクスワーゲン(VW)グループが2025年3月11日に発表した2024年の決算は、売上高(3250億ユーロ=52兆円 ※)は対前年比で微増(+1%)でしたが、営業利益(191億ユーロ=3兆円)は高水準の研究開発や設備投資、中国市場での販売の落ち込み(−9.5%)などの影響で−15%の減益となりました。また、同月14日に発表されたBMWの決算も、EV販売は伸びたものの、中国市場の不振などで売上高と営業利益ともに減少しています。EVやSDVへの開発投資や国内メーカーとの競争が激化する中国市場の対応を迫られている両社の現状を決算から探ってみます。※:1ユーロ=160円で計算(タイトル写真:2024年に世界で54万台を販売したVWのベストセラー、ティグアン)

アウディとポルシェの利益が急減

今回VWグループの業績にブレーキがかかった主な原因は、利益の稼ぎ頭だったアウディとポルシェの落ち込みで、両社の営業利益は39億ユーロ(−38%)と56億ユーロ(−23%)に減少しました。アウディについては、グループ企業のカリアッド(Cariad)のソフトウエア開発の遅れで中型EVのQ6 e-tronや、電動化したICEのアウディ A5やQ5の導入が遅れたことが響いています。

EVについては、Q4 e-tronは発売4年を経ても依然として人気を保っていますが、大型のQ8 e-tronについては発売2年で販売台数が急降下し、ベルギーの生産工場は2025年2月に閉鎖されました。アウディの2024年の販売台数は167万台(前年比−11.8%)でテスラ(179万台)に抜かれました。

画像: アウディとポルシェの利益が急減

2023年9月にポルシェからアウディのCEOに就任したゲルノート・デルナー氏は、5000人規模のスタッフ削減と大幅なコストカットを計画していると報じられています(詳細は3月18日の決算説明会で明らかになると予想)。ポルシェと共同開発したPPE(プラミアム・プラットフォーム・エレクトリック)ベースのQ6 e-tronやA6 e-tronといったミドルサイズのBEVを2024年から矢継ぎ早に導入していますが、6万〜7万ユーロからという高価格帯であり、多くの販売台数は見込めないでしょう。

当面は、刷新したICE用のPPC(プレミアム・プラットフォーム・コンバスチョン)をベースとし、「MHEVプラス」と呼ぶ強力なマイルドハイブリッド技術を搭載した新型A5やQ5といった電動化ICEモデルに頼ることになりそうです。

画像: 2017年からアウディ初のEV「e-tron」を生産し、2022年末から後継のQ8 e-tronを生産してきたブリュッセル工場は、75年の歴史に幕を閉じた。(写真:アウディ)

2017年からアウディ初のEV「e-tron」を生産し、2022年末から後継のQ8 e-tronを生産してきたブリュッセル工場は、75年の歴史に幕を閉じた。(写真:アウディ)

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