VWブランド(乗用車)の利益率はわずか2.9%
2024年秋にドイツの工場閉鎖も辞さずとして3カ月のマラソン交渉の末、「未来のフォルクスワーゲン」と呼ぶ協約を労働組合と結んだVWですが、2024年のVW(乗用車)ブランドのROS(営業利益率)は2.9%と低迷。EVの世界販売台数も38万3000台(2023年比−3%)と停滞しており、販売は依然として2024年に一部改良したゴルフやティグアン、Tロックなどの内燃機関車(ICE)に頼っている状況です。

VWグループの2024年の業績は、アウディグループ、ポルシェ、トラトン(トラック)や金融部門を含む。VW乗用車が売上高や利益に占める比率は小さい(決算資料などから筆者作成)
EV販売の勢いの回復が期待できるのは、2026年から販売されるスモールEVのID.2や、2025年3月にお披露目されたシティカーのID.EVERY1が2027年に登場して以降となりそうです。ただし、2万〜2万5000ユーロの価格帯からとなるこれらモデルは収益的には大きな貢献は期待できず、VWブランドのROSは2025年が4%以上、2027年に5.5%の目標で、中期計画上の6.5%の達成は2029年まで3年も延期されました。
「未来のフォルクスワーゲン」では、2030年まで組合員の賃金の凍結とドイツ国内で35,000人の人員削減、73万台の生産能力カットなどで年間15億ユーロのコストを削減する計画ですが、それでも今後3年以上厳しい収益状況が続くと想定しているわけです。シュコダとセアト、VW商用車を含むVWブランドコアグループの中では、販売台数が100万台を超え、営業利益が23億ユーロ(ROS 8.3%)とVWブランドと同等の利益を出しているシュコダが気を吐いています。

VWが労働組合と合意した、(左から)労務費削減効果(年間10億〜15億ユーロ)、ドイツ生産能力削減(180万→100万台)、従業員削減(11.1万→7.5万人)計画(決算発表資料より)