海外ブランド勢の反攻はあるのか
2024年の北京モーターショーと同様に、ドイツのフォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツの3社は今年もCEOが揃って上海入りし、プレス会見に登壇しました。
フォルクスワーゲンは、かつて主要な国際モーターショーで定例だった開幕前夜のグループメディアナイトを実施し、ここでオリバー・ブルーメCEOが、同ブランド初のEREVである「ERA」をはじめとしたNEVを3モデル、そしてアウディブランドからは上海汽車の車台をベースに開発したEV「E5 スポーツバック」を披露しました。E5は、シルバーフォーリングスをグリルから取り去り、代わりに「AUDI」の4文字を配しましたが、アウディのショールームで聞いたところでは、このFour letter AUDIは、「これからクルマを買おうとする若い世代をターゲットにするブランド」で、車両価格は20万元以下になるようです。

Audi E5スポーツバック(写真)と上海汽車本社ビル1階にあるアウディのHouse of Progress。今後「Four Letter Audi」と「Four Rings Audi」の2本立になるという。

Audi E5スポーツバックと上海汽車本社ビル1階にあるアウディのHouse of Progress(写真)。今後「Four Letter Audi」と「Four Rings Audi」の2本立になるという。
BMWは、音声で対話できるAIアシスタントでアリババと提携し、チャットGPTに匹敵するという中国発の生成AI「ディープシーク(DeepSeek)」を採用。次世代車「ノイエクラッセ」の最初のモデルとなる「iX3」の中国向けモデルから搭載していくと発表しました。またメルセデス・ベンツは、中国で人気が高まっている高級ミニバン市場に向けて、次世代Vクラスのコンセプトカー「Vision V」のワールドプレミアを行いました。
日本勢もトヨタ自動車が、レクサス「ES」やトヨタ「bZ7」を発表し、自動運転では中国でファーウェイ(HUAWEI)と並んで高いADAS技術を擁するといわれるモメンタ(Momenta)と提携します。また、ホンダも中国で展開するEVの「イエ(烨)シリーズ」にモメンタとディープシークの技術を採用します。日産も提携先の東風汽車と開発したセダン「N7」や初のPHEVピックアップトラックである「Frontier Pro」でモメンタやファーウェイと提携しているほか、昨年の中国販売台数が8万台で瀬戸際にあるマツダが発表したSUV「EZ-60」は、長安汽車のNEVブランド「デーパル(DEEPAL)」の車台やソフトウエアを使っています。

上海にレクサス工場を建設するトヨタ自動車は「レクサス ES」(写真)を、マツダは長安汽車と開発した「EZ-60」を発表した。

上海にレクサス工場を建設するトヨタ自動車は「レクサス ES」を、マツダは長安汽車と開発した「EZ-60」(写真)を発表した。
このように欧米や日本の自動車メーカーは、EV性能やAIアシスタント機能、ADASなどで中国メーカーの後塵を拝しており、その開発スピードに追いつくために中国製の車台やソフトウエアを採用せざるをえなくなっています。上海の街で見かけるドイツ車や日本車は大概ブルーのナンバープレートで、グリーンプレートのNEV車はほぼ中国ブランドです。こうした実態から、海外ブランド勢の反攻は相当厳しいといわざるをえません。BYDの王伝福会長が1年前のアナリスト説明会で述べた「3〜5年以内に海外ブランドのシェアは10%まで下がる」という予測が現実味を帯びてきているのです。
