2年に一度の北京モーターショー(Auto China 2026/以下、北京ショー)は、今回は従来の倍以上の38万平方メートルに拡張された会場で、21カ国から1451台が展示される巨大なスケールで開催(4月26日〜5月3日)されました。ハンズオフの自動運転で目的地まで運んでくれる「レベル2++」のADASや6分半で1000km走行分の充電が可能なEVバッテリーなど中国メーカーの技術進化は目覚ましく、海外の自動車メーカーは、CATLのバッテリーやファーウェイのコクピット技術、モメンタのADASをもはや躊躇なく採用しています。「郷に入っては、郷に従え」が歴然とした世界最大の自動車市場における勢力図の転換は、海外メーカーの気力を萎えさせるほどです。各社の発表資料や報道から、中国市場の今後とドイツや日本の自動車メーカーの生き残り戦略について考えてみます。(写真はBYD傘下のファンチェンバオが発表したフォーミュラシリーズ。写真:BYDジャパン)

「ノックアウトステージ」の次に来るもの

日本の自動車メーカーも、トヨタを除いてシェアの低下は避けられそうにありません。自動車アナリストの中西孝樹氏は大手経済紙のLIVE番組で、「日産が中国を戦略的ハブとして活用しようとしているのに対し、ホンダは中国を部品調達の面で有効活用しようとしている」、「トヨタは中国を日系サプライヤーに対する刺激としつつ、日本の部品産業を守る視点で動いている」と興味深い指摘をしていました。

100社以上ある中国自動車メーカーも「ノックアウトステージ」に入った本国マーケットで淘汰されるのは必至で、大手は活路を求めて欧州や東南アジア、アフリカなどに怒濤の如く進出しており、昨年の中国の自動車輸出台数は700万台を超えました。年間1320万台の欧州市場(EU+EFTA+UK)では、2025年にMG(上海汽車傘下)が30万台、BYDが18万台、チェリーが15万台を販売して中国製ブランドのシェアは約6%。今年に入っても躍進を続け、3月はシェア9.4%に上昇しています

画像: 3月に英国市場の車名別販売でトップとなったチェリーのPHEV「Jaecoo 7」

3月に英国市場の車名別販売でトップとなったチェリーのPHEV「Jaecoo 7」

チェリーは元日産工場だったスペインのバルセロナですでに現地生産しており、BYDのハンガリー工場もまもなく操業を開始。MGもスペインに工場建設を固め、フォードは自社の遊休工場を吉利汽車の生産に充てる交渉中と報じられています。中国製のEV(PHEVは対象外)に最大35%の追加関税をかけたEUも現地生産を止めることはできず、中国車のシェアはさらに拡大して、今後は欧州で販売するモデルを中国車のアーキテクチャベースで開発する欧州メーカーの動きが加速しそうです。

東南アジアでもタイではBYD、MG、長城汽車、長安汽車などの現地工場が稼働し、9割近かった日本メーカーのシェアは7割以下まで低下しています。

自動車産業は政治と不可分か?

中国が世界の自動車産業の勢力図を書き換えている中で、日本の自動車産業は、最大の得意先である米国への依存が高まりそうです。米国と陸続きのメキシコでは今年第1四半期の中国車のシェアが11%を超え、カナダでも年間約5万台に限定して中国車にかける関税を100%→6.1%に引き下げる決定をしました。米国にもいずれ中国車が入っていくのは避けられないと専門家は予想しています。

米国ではエヌビディア、マイクロソフト、グーグル、オープンAI、イーロンマスクのxAIなどの巨大テックが半導体やAIの開発や資源をめぐって熾烈な競争を繰り広げており、中国製のEVや半導体、車載電池などは実質的に輸入禁止となっています。自動車が半導体やAIという国家戦略物資のキャリアーとなるとすれば、米中対決の地政学の影響を免れるのは難しく、中国自動車産業の台頭に直面して、日本の自動車メーカーの戦略の選択肢は限られてきたといえるかもしれません。(了)

●著者プロフィール
丸田靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在を経て、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。


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