「インチャイナ、フォーチャイナ」が標準に
過去数年でシェアを大きく落としている日本やドイツの自動車メーカーですが、今回日本メーカーのトップで北京に足を運んだのは、日産のイヴァン・エスピノーサCEOのみです。日産は4月中旬に発表した長期ビジョンで、米国と中国そして日本をリード市場と位置付けました。2030年に米国と中国で各100万台、日本で55万台の販売を目指し、昨年65万台だった中国で新車開発の中核拠点として700人のエンジニアを配置し、将来的に中南米や東南アジアなどへ30万台を輸出するハブ化計画も含まれます。
東風日産が昨年発売したN7とN6は、中国の消費者のニーズを取り入れ、L2++のADAS(中国企業のモメンタのシステムを採用)や冷蔵庫、マッサージ機能付きシートなどを装備し、10万〜15万元(230万〜345万円)という価格帯で販売好調です。4月にはSUVのNX8を追加したほか、今回は「アーバンSUV」とオフロード車の「テラノ」のコンセプトを発表しました。ちなみに、中国のユーザーはクルマの中で寛ぐ時間が1日に2〜3時間に上り、車内に大型TV、ソファシート、高性能スピーカー、冷蔵庫の「4種の神器」が必須で、これらを装備していないと顧客の選択肢に入らないそうです。
かつては中型セダンのシルフィなどがヒットして年間130万台を販売した日産だけに、中国市場のニーズをしっかりと受け止め、現地合弁会社の裁量に任せたことで、短期間でN7のようなヒット製品が生まれました。この成功体験をエスピノーサ体制では、ターンアラウンド戦略の中核に据えようとしています。

日産が発表したモデル、左からテラノ、NX8、アーバンSUV。エスピノーサCEOは「For China、From China」のスローガンを掲げ、中国を輸出ハブとする計画を語った。
日産と対照的だったのが3月に開発中のEV「ゼロシリーズ」のキャンセルと巨額の損失を発表したホンダです。中国メーカーの脅威にいち早く気付いたものの、すべてを自社開発しようとしたために一昨年の北京ショーでお披露目した「イエ(烨)シリーズ」のEVは、「発売した時にはすでに市場は2回転していた(自動車アナリストの中西孝樹氏)」中国の開発スピードに追いつけず、ADASやコクピットなどが時代遅れと感じられて消費者離反を起こしました。ホンダは、今回プレスブリーフィングも行わず、F1やアコード60周年といった歴史や二輪車、航空機などを交えたマルチモビリティの展示となりました。
トヨタは、BYDとbZ3を、広州汽車とはbZ3Xを共同開発して中国専用車を導入していますが、コンパクトSUVのbZ3Xは若者向けのデザインや装備が人気を博しています。昨年の上海ショーでお披露目した上級セダンのbZ7を今年3月に発売しましたが、インテリアには自動車メーカーらしく耐久性を重視した素材やアナログ的なスイッチレイアウトを残しつつ、冷蔵庫や冷却ファン付きスマホ充電パッドなどを装備、モメンタと共同開発したADASにLiDARを組み込むなど最新技術を取り入れながら、保守的なトヨタの顧客に違和感のない仕様に仕上げています。上海にEV専用工場を建設中のレクサスブランドからは、LSに匹敵する堂々たるサイズのES300hが展示され、こちらはEVとHEVが導入されます。

トヨタbZシリーズのフラッグシップとなるbZ7は中国と日本のサプライヤーを競わせて開発したという。
