2024年11月15日から、中国の広州モーターショーが開幕しました。海外からの注目度こそ隔年で行われる北京や上海のモーターショーに劣りますが、22万平方キロメートルの展示面積に1100台が並ぶ規模を誇ります。スマートフォンで有名なシャオミ(小米)や、ファーウェイ(華為)がセレスグループと開発するAITOなどの「新々勢力」ブランドが人気を博し、10月の乗用車販売では中国ブランドのシェアはついに65%に達しました。一方で、同じような半導体やソフトウェアを使い、デザインも似通ったものが増えて「スマホのように、外観と機能の違いはますます小さくなっている」という見方も出ています。そのあたりの動向を上海の自動車メディア「第一汽車頻道」の記事から紹介したいと思います。(写真:BYDジャパン)

競争は中国の外に広がる

中国市場の過酷な競争を逃れて、欧州や東南アジア、南米など海外に活路を見出そうとしている中国メーカーの2024年の輸出台数は、2023年の500万台から2割以上増えそうです。

欧州は中国製EVに最大35.5%の追加関税を課しましたが、中国で合弁メーカーの中核技術を使うことを経験した海外メーカーは、今後は本国で開発する車両にも、中国発のアーキテクチャやソフトウェアを使用する可能性もあるでしょうし、少なくとも、これまでの規模の本国の開発体制は必要なくなると想像できます。

GMやステランティス、アウディなどのOEMや、ボッシュ、コンチネンタル、ZFなどの一次サプライヤーが相次いで千人単位の人員削減を発表しているのは、その動きが始まっていることの証左でしょう。北京で発表されたVWの「ID. CODE」は欧州でスタイリッシュなEVが人気のクプラ(Cupra)ブランドなどで販売しても良さそうですし、マツダも長安汽車と開発したEZ-6を欧州で販売することも検討しているようです。

画像: 北京ショーで発表されたVWのID.CODE。伝統的ながっちりしたVWデザインからは大きく飛躍している。VWロゴマークも控えめ。

北京ショーで発表されたVWのID.CODE。伝統的ながっちりしたVWデザインからは大きく飛躍している。VWロゴマークも控えめ。

海外戦略を強化しているBYDの2024年1〜10月の欧州販売台数は3万5000台(前年同月比:312%)と大きく躍進しています。ステランティスのカルロス・タバレス会長は、「中国EVを堰き止めようとしてもいずれ対峙せざるを得なくなる」と述べましたが、中国から溢れ出す製品と技術の波に欧州の自動車産業が洗われていくのは必至です。

アメリカではトランプ次期大統領がその流入を断ち切ろうと、中国やメキシコからの輸入に対する関税を上げて対抗する構えですが、電池をはじめとする重要部品を押さえる中国の影響を完全に断ち切ることは難しいでしょう。ドイツで3カ所の工場閉鎖を検討しているVWのアンテリッツCOOは、対応に残されている時間はあと2〜3年と述べましたが、その言葉が一層の現実味を持って迫ってきます。(了)

●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。

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