SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の開発で存在感を増す半導体メーカー
9月のミュンヘンでのIAAモビリティでは、ボッシュやコンチネンタル、ヒュンダイMOBISなど自動運転システムを開発するティア1サプライヤーに加え、ルミナー(Luminar)やヘサイ(Hesai)などの新興のLiDARのサプライヤーや自動運転のソフトウェアを提供するスタートアップなどが多く出展していました。
最近は、ゲームや動画のストリーミングなどで大容量の演算が可能なチップを持つ半導体メーカーがADAS分野に進出しており、メルセデス・ベンツは、グラフィックGPUで世界を席巻し、最近はAI用のSoC(システム・オン・チップ)でも高いシェアを誇るNVIDIAとの提携を深めています。
BMWは、モービルアイ/インテルのADASシステムを採用してきましたが、次世代のEV「ノイエ・クラッセ」では、スマホのSoCで大きなシェアを握るクアルコムの「スナップドラゴン ライドフレックス」を採用すると発表していますし、2026年導入のソニー・ホンダモビリティのEV「アフィーラ」も同社製のチップを採用します。これら半導体メーカーの最新のSoCは、デジタルコクピットやインフォテイメントからADASや自動運転まで一括して制御する性能を備えているのが特徴です。
そんな中で、VWグループの傍にブースを出していたのがADASシステムの老舗であるイスラエルのモービルアイ(Mobileye)です。同社のカメラセンサーを利用したEyeQと呼ばれるチップセットは2010年前後から世界の主要メーカーに採用されており、2017年にはアメリカの半導体の巨人インテルの傘下に入り、その経営基盤を固めています。最近ではポルシェと提携すると発表しましたが、これは、フォードと共同出資した自動運転スタートアップのArgo (アルゴ)AIが清算に追い込まれ、自動運転を含むビークルソフトウェアの開発を担当するグループ企業のカリアッド(Cariad)の混迷が表面化したVWグループのモービルアイへの先祖返りかと思われました。
モービルアイが汎用性の高いシステムで巻き返すか?
今回、IAAの会場でモービルアイの担当者と話したり、同社のホームページを確認してわかったのは、EyeQによるADASシステムを20年近く自動車メーカーに提供してきたモービルアイは、全世界の50社以上の自動車メーカーと取引があり、そのADASを搭載した車は1億2500万台にも上るという事実です。カメラセンサーの情報をベースにするEyeQは、自動車メーカーが求める運転支援のレベルに応じて、第3世代から第6世代までのチップセットをモジュールとして提供しています。
たとえば、先行車追従のアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)や衝突軽減ブレーキなどの基本的なADASなら2018年に導入されたEyeQ4MidでOK、 「レベル2+」と呼ばれるハンズフリーやレーンチェンジの自動操舵アシストなどより高度なADASの場合は2021年導入のEyeQ5でといった具合です。