4年に一度行われる「デトロイト3」の自動車メーカーと全米自動車労働組合(UAW:自動車、航空、農業の各産業の労働者の組合組織で、米国、カナダ、プエルトリコで約40万人の現役ワーカーと58万人の退職者がいる。設立は1935年)の労働協約の交渉が9月14日の期限までに決着せず、翌日から史上初となる3社に対する同時ストライキが実施されてから1週間が経ちました。依然両者の溝は深く、UAWは各社1ヶ所ずつの完成車工場に加えて、GMとステランティスの全米38ヶ所の部品センターでのストライキに入りました。(タイトル写真はUAWのFacebookベージより。MOPARはステランティスの部品のブランド名)

40%の賃上げ要求は法外ではない?

賃金の40%近い引き上げを求める組合の要求は一見過剰にも見えますが、ロイターの調査によれば、全米の世帯の58%がUAWの闘争を支持している模様です。民主党にとってはUAWは重要な支持母体であり、来年に再選への選挙を控えるバイデン大統領は、今週火曜日にミシガン州に飛んで改めて闘争の支持を表明するようです。ストライキが2週間目に入り拡大したことで、アメリカのメディアも報道のトーンをあげています。

40%の賃金アップというと法外なようですが、これは向こう4年間にわたっての実施なので、毎年8.6%ずつ上がれば4年後には40%に達します。この数字の根拠は、過去4年間にデトロイト3のCEOの報酬が40%上昇したというもので、経営者と同等の利益分配を労働者も受けるべきという主張が背景にあります。CBSニュースによれば、2022年のデトロイト3のトップの報酬は、フォードのジム・ファーレイ氏が2200万ドル(約30億円)、ステランティスのカルロス・タバレス氏が2480万ドル(36億円)、GMのメアリー・バーラ氏が2900万ドル(42億円)です。

UAWの要求に対して、3社は約20%の賃上げを回答していますが、その溝は大きいままです。また組合の要求には、就業年数による年功によって時給18ドルから32ドルの幅がある賃金の階層(Tier)をなくすこと、2008年の金融危機でGMとクライスラーが破綻した際に廃止されたインフレ調整手当(COLA=Cost of Living Adjustment)を復活させること、期間労働者(temporary worker)を90日後には正式従業員にすること、退職後の企業年金や健康保険を充実させること、週40時間労働を32時間労働にして今と同等の賃金を支給することなど多岐にわたっており、これを全て飲むことはUAW非加入の外国メーカーの工場に対して著しい競争力の低下につながるという会社側の主張もうなづけます。

画像: 過去4年間にインフレは19%、デトロイト3のCEOの報酬は40%上昇したのに対し、組合員の賃金は6%しか伸びていないという。出典:UAWホームページ

過去4年間にインフレは19%、デトロイト3のCEOの報酬は40%上昇したのに対し、組合員の賃金は6%しか伸びていないという。出典:UAWホームページ

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