2026年1月6日から9日まで米国ラスベガスで開催されたCES2026は、家電から自動車、ヘルス機器、ロボティクスまでAI一色に染まり、まさに「AIバブル」を彷彿させました。ソニー、キヤノン、メルセデス・ベンツなど家電や自動車の大手メーカーが出展を見送った中で、モビリティ中心の西ホールに広大な展示面積を占めたヒョンデ(Hyundai)は、傘下のボストンダイナミクスのヒューマノイドなどロボット中心の展示を行い、自動車部品大手の独ボッシュも、プレス会見でAIコンロで厚いステーキを好みの加減で焼いて見せるなど、AIは工場から家庭まで人間社会のいたるところに導入されつつあることが実感されました。(タイトル写真:ヒョンデブースの展示)

地方都市では新たなモビリティ形態を模索

また、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のブースでは富士通がMaaS設計の事例を紹介していました。神戸や福島、英国の都市などで人の動きやクルマの流れのデータを元に「ソーシャル デジタルツイン」でモビリティの設計を行っているのです。人口32万人の群馬県前橋市のような中規模都市でも、バスの運行本数が減少して「交通空白」が発生し、高齢者が病院に行けなくなるなどの懸念があり、AIシミュレーションで乗合タクシーの導入や公共バスの運行の最適化を図るプロジェクトが進行中です。過疎化が進む地方では、バスの運行も補助金に頼る自治体が増えていますが、自動運転バスの運行や、インバウンド観光なども取り込んで利益の出る形のモビリティを模索しています。

画像: 富士通は国土交通省や自治体とソーシャルデジタルツインでモビリティの最適化を図る。

富士通は国土交通省や自治体とソーシャルデジタルツインでモビリティの最適化を図る。

日本の地方都市ではタクシードライバーの確保も難しく、筆者の故郷の山口県防府市(人口10万人)でも、30台の車両を持ちながら夜間はドライバーが1人しかいないと嘆くタクシー会社があります。また、豪雨被災した過疎地の鉄道の復旧を諦めEVバス輸送に転換して利用者数を増やすことに成功したJR九州の「BRTひこぼしライン」のような事例では、運転手不足が課題であり、次はAV化が望まれるでしょう。日本にも、国内外のパートナーとADAS/AVシステムをオープンモデルで進めるティアフォーや、2027年までに東名高速道路でトラックの自動運転を目指すT2などのスタートアップがあり、国土交通省も2030年までに1万台のL4車両の運行を目標に掲げてこれらの試みを支援しています。

画像: ティアフォーはAVのデータやシミュレーションツールをオープンソースで提供し、多くのパートナーと広く協同する。(同社CESブースのパネル)

ティアフォーはAVのデータやシミュレーションツールをオープンソースで提供し、多くのパートナーと広く協同する。(同社CESブースのパネル)

企業にとっては、コストを下げつつ製品の品質やサービスを向上する上でAIの導入は待ったなしでしょう。一方で、「AIは確かにバブルである。投資家の目ではなく、利用者の目からの検証が必要」*と警鐘も発せられており、AIの狂騒から少し距離を置き、技術本位でなく、人間の利便性とウェルビーイングの向上のために本当に必要なAIから実装していけば良いのでは、と改めた感じたCESでした。

*出典「AIバブルの不都合な真実」クロサカ タツヤ著

画像: ラスベガスコンベンションセンター西ホールと彼方にスフィア。

ラスベガスコンベンションセンター西ホールと彼方にスフィア。

●著者プロフィール
丸田靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在を経て、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。

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