「夢の電池」と呼ばれる車載用の全固体電池(SSB:Solid State Battery)の開発競争がさらに熱を帯びてきた。先行していたトヨタ、ホンダ、日産などの国産車メーカーを、米欧中が急速に追い上げている。去る2025年6月17日には、目下、絶好調のXiaomi(シャオミ)も自社開発の全固体電池の特許を公開。いまや日米欧中が入り乱れて、夢の電池の開発競争に明け暮れている。1回の満充電で1000km以上の航続距離を実現すると言われる全固体電池、果たしてそのウイナーは?(タイトル写真はシャオミの最新モデルYU7)

わずか10分で800kmも航続距離を回復? シャオミが全固体電池の開発競争に参戦

そこに想定外のコンペティターが登場した。それが、2024年から自動車事業に参入したばかりのシャオミである。去る6月13日に公布、同17日に発表された同社の特許が関連業界で話題となっている。

なかでも注目されているのが、独自の「層状電極構造」と呼ばれる技術。簡単に言えば固体電解質の構造を単純化(層状電極)することでイオンの移動距離を短縮するとともに移動速度を向上し、エネルギー密度を大幅に高める構造だ。そして、かねてより課題とされてきた全固体電池に特有の生産工程と設備を、旧来の液系電池(NMCやLFP)と共用することが可能になるという点である。つまり、量産性が極めて高く、新たな投資を最小限に抑えることが可能だという。

詳細は不明だが、すでに試作品は存在しているようだ。シャオミによれば、バッテリーパックを車体の構造部材として使用するCTB(Cell to Body)技術に対応しており、パック本体の高さは車両の床面を含めわずか120mmしかない。非常にコンパクトで設計の自由度が高くなる。目標とする航続距離はCLTCモードで1200km超え(WLTPモードに換算するとおよそ1000km超)、10分間の充電で800kmの航続距離を回復できると主張している。

実車に搭載した試験開始の予定は公表されていないが、現地の一部メディアは2027年前後に始まると報じている。現状では外部(CATLやBYD傘下のFinDreams Batteryなど)から液系電池を調達しているシャオミだが、全固体電池をどこで生産するかは明らかにされていない。自社工場を設立するのか、それとも既存の提携先へのライセンスによって生産を委託する可能性もある。さらに言えば、全固体電池では先行しているCATLやBYDが、シャオミ方式に乗り換える可能性を指摘する声もあるほどだ。

全固体電池を搭載した市販車は、現段階では依然としてトヨタがトップバッターになるというのが大方の予想だが、それとて当初はごく少量生産の高額車への搭載から始まることになる。続く、欧米中の自動車も同様だと思われるが、シャオミの安価な全固体電池が登場すれば状況はまた大きく変わる可能性はある。

画像: GMとLGが共同開発した「LMRバッテリー(写真は試作セル)」。液系NMCと同等の性能とLFPを凌ぐコストパフォーマンスを実現する。

GMとLGが共同開発した「LMRバッテリー(写真は試作セル)」。液系NMCと同等の性能とLFPを凌ぐコストパフォーマンスを実現する。

一方では、より安価で高性能なLFP電池も続々登場する。さらに、先日、GM/LGが発表したコバルトを使わずにNMCと同等の性能とLFPを凌ぐコストパフォーマンスを実現するという「LMR(リチウムマンガンリッチ)」が2028年までに登場する。車載用電池の開発は、依然として混沌としている。実績のある液系NMC電池がある日突然消滅するわけでもないが、こちらは徐々にシェアを減らしていくことになりそうだ。

いずれにせよ、全固体電池が市販車に搭載されるのは早くとも2027年~2028年になるだろう。果たして、期待どおりの性能は発揮できるのだろうか。大いなる期待とともに、風雲急を告げる業界の動向からは目を離せそうもない。

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