トヨタ、ホンダ、日産など日本メーカーの圧倒的リードが伝わっていた車載用全固体電池(ASSB:All Solid State Batteries)の開発競争に異変が起きている。欧州・米国、そして中国勢の追い上げが目覚ましい。技術の手の内化を目指す日本メーカー、米国の新興バッテリーメーカーとの共同開発を進める欧州、そして中央政府のバックアップのもとにコンソーシアムを形成して「世界初の実用化」を目指す中国勢など、それぞれのアプローチの違いも鮮明になってきた。

タイトル写真:市販車ベースの試作車で世界初の公道走行テストを開始したメルセデス・ベンツ。リアルワールドで性能、安全性、耐久性などの検証を重ねていく

そもそも全固体電池とはなにか。そしてそのメリットとは?

まずはその特徴を簡単に振り返っておこう。「夢の次世代電池」と呼ばれている全固体電池ではあるが、正極と負極のあいだをリチウムイオンが移動して発電/充電する理屈は、現在主流の電解液を用いるリチウムイオン電池と同じだ。

では、なにが違うのかと言えばイオンの移動を仲介する電解質が「液系(=電解液)」ではなく、文字どおり固体であるところ。液漏れの心配がない全固体電池は、高温でも安定した充放電能力を発揮するうえ、発火リスクも大幅に低減される。

さらにエネルギー密度が高いので航続可能距離が長くなるとともに、充電に必要な時間が大幅に短縮できる。また、正極と負極を分けるセパレーターが不要なので設計自由度が高くコンパクト化も可能だ。まさにEVをはじめとする電動モビリティに最適な電池といえる。

画像: 全固体電池のイメージ。電解液やセパレーターがないことでさまざまなメリットが生まれる。(図はトヨタ自動車作成)

全固体電池のイメージ。電解液やセパレーターがないことでさまざまなメリットが生まれる。(図はトヨタ自動車作成)

固体電解質は、「硫化物系」「酸化物系」「ポリマー系」に大別される。このうち車載用電池にもっとも適しているのは硫化物系であり、全固体電池として開発が進んでいるのがこのタイプだ。一方、酸化物系の固体電解質は有機ゲル電解質を併用することから「半固体電池」と呼ばれており、正極と負極を隔離するセパレーターも存在する。能力的には全固体電池には及ばないとされ、あくまで液系と全固体の「つなぎ技術」とされている。

車載用全固体電池の開発は、トヨタ、ホンダ、日産の日本勢3社が大きくリードしていると言われてきた。しかし2024年あたりから、欧米勢、そして中国勢が急速に力をつけてきている。

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