※Cox Automotive調べ
GMやホンダが米国市場でのEV投資を延期
GMは従来、ニューヨーク州バッファロー市近郊の工場で電気モーターの生産に3億ドル投資する計画でしたが、この方針を転換し、同工場で新型V8エンジンを生産するために8.8億ドル(1280億円 ※)投資すると5月27日に発表しました。同社のドル箱車種であるシボレー シルバラードをはじめとする大型ピックアップトラックやSUVに搭載するエンジンで、EVからエンジン車(ICE)へ投資を切り替えたことになります。GMは2024年12月にも、ミシガン州ランシングにある韓国LGエナジーソリューション(LGES)とのリチウムイオン電池生産合弁会社の持株分(10億ドル)をLGESに売却することで合意しており、EV投資の抑制とICEへの振り替えを進めています。※1ドル=145円で換算
5月1日の2025年第1四半期(Q1)決算のオンライン会見で、GMのメアリー・バーラ会長兼CEOは、「顧客からの需要に合わせて、昨年末からEVの生産を調整(moderated)している」と語り、「生産台数を増やせばEVの損益分岐点は下がるが、販売奨励金を積んで無理に販売はしない」方針です。
GMが昨年発売したシボレー エクイノックスやブレイザーなどのEVの販売は順調で、キャデラックでもリリックやオプティック、エスカレードIQなどEVの販売比率は2割に達しており、同社のQ1のEV販売台数(3万1887台、前年同期比+94%)は、テスラに次いで第2位です。それでも、バーラ会長は「現在のEVのポートフォリオをさらに拡大する計画はない」と述べました。
EV投資については、フォードやステランティスもブレーキをかけているほか、GMのアルティウム電池を使った「ホンダ プロローグ」や「アキュラ ZDX」を昨年発売したホンダは、カナダで計画していたEVの生産とサプライチェーンへの大規模投資(約1兆6000億円)を最低2年間延期すると今月発表しました。

ホンダはカナダオンタリオ州で計画していたEV生産の大規模投資を最低2年間延期すると発表(写真は、今年1月のラスベガスCESで披露された「ホンダ 0(ゼロ)シリーズ」のサルーン)
バイデン前政権によって制定された2032年のCO2排出規制や企業平均燃費基準(CAFE)を、トランプ政権が緩和するのは必至であり、カリフォルニア州独自のゼロエミッション規制を無効にする法案が近く米議会上院でも採決される見通しです。米国のEVシフトが大幅に遅れることは明らかで、自動車メーカーの投資戦略の修正やIEAのEVシェア見通しの大幅な引き下げはこれを反映しています。

2030年EVシェア予測(水色がEVで青がPHEV。出典:IEA)