トヨタ、ホンダ、日産など日本メーカーの圧倒的リードが伝わっていた車載用全固体電池(ASSB:All Solid State Batteries)の開発競争に異変が起きている。欧州・米国、そして中国勢の追い上げが目覚ましい。技術の手の内化を目指す日本メーカー、米国の新興バッテリーメーカーとの共同開発を進める欧州、そして中央政府のバックアップのもとにコンソーシアムを形成して「世界初の実用化」を目指す中国勢など、それぞれのアプローチの違いも鮮明になってきた。

中国の動向~全固体電池の研究は継続するも方向性に変化も

車載用バッテリーでは圧倒的な世界シェアを誇る中国。2024年1月下旬、大きな動きがあった。バッテリー開発・生産大手の「CATL」「FinDreams Battery(BYD傘下)」、「CALB」、「Svolt Energy Technology」、「EVE Energy」、「Gotion High-tech」など6社と、自動車メーカーの「BYD」、「Nio」が参加する全固体電池の開発とサプライチェーンの構築を目指すコンソーシアム「中国全固体電池協同創新:Chaina All Solid state Battery Collaborative Innovation Platform(以下、CASIP)」の結成が発表されている。中央政府主導のコンソーシアムであり、2030年には現在の主力であるLFP(リン酸鉄)リチウムイオンバッテリーに加えて全固体電池でも世界のリーダーとなることを目指している。

とはいえ、現時点でその足並みがどこまで揃っているかは定かではない。最大手のCATL、それに次ぐBYDも、全固体電池の研究開発は2010年代前半から開始しており現在も試作を重ねているが、両社ともに実車に搭載した走行テストは2027年前後になると見込んでいる。むしろ、現在は主力バッテリーである液系LFP(リン酸鉄)リチウムイオンバッテリーの性能向上・安全性向上に力を入れているように見える。

画像: BYDが独自開発した「ブレードバッテリー」は液系LFPリチウムイオン電池だが進化を続けている。

BYDが独自開発した「ブレードバッテリー」は液系LFPリチウムイオン電池だが進化を続けている。

またCATLは2025年4月21日に上海で開催された新製品発表会で、ナトリウムイオン電池の新ブランド「鈉新(Naxtra)」を正式に発表した。「鈉新」の乗用車向け電池は同年12月から量産開始予定で、既存の液系リチウムイオン電池に代わる新たな選択肢として注目を集めている。

依然として電解液に有機溶剤を使うものの、正極に希少金属(とくにニッケル、コバルト)を使用せず、地球上のどこにでもあるナトリウムを使うのが大きなポイント。長期的な視点に立てば、いつかは尽きる希少金属を使わないため、全固体電池よりも将来性はあると考えたのかもしれない。

中央政府の掛け声の元に、技術知見を集結して電池産業の新たな覇権の確立を目指す中国勢だが、現在のところその足並みが揃っているようには見えない。だが、CATL、BYDともにその技術知見はすでに十分蓄えているはず。突然の重大発表の可能性には備えておくべきだろう。

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