10月31日から一般公開中のジャパンモビリティショー2025(以下、JMS)は、連日多くの来場者で賑わっています。最高級ブランド「センチュリー」を発表したトヨタは南館1−2ホールを占有したブースでトヨタ、ダイハツ、レクサス、センチュリーの4ブランドの未来像を展開。ホンダは、二輪からジェット機やロケットまで「陸・海・空の総合モビリティカンパニー」の魅力をアピールしています。海外メーカーはドイツと中国、韓国に絞られて国際色は薄れましたが、ここでは輸入車ブランドの注目点を紹介していきます。(タイトル写真:「MINIクーパー3ドア ポール・スミス・エディション」を発表するポール・スミス氏(右)とヨッヘン・ゴラー取締役)写真はすべて筆者撮影。

韓国からはヒョンデとKiaが初出展

JMSではフォルクスワーゲンやアウディが2017年を最後に出展しておらず、フランスやイタリア勢も姿を消しているのは輸入車ファンには寂しい限りですが、今回は韓国から2022年にオンライン販売主体で日本に再上陸したヒョンデ(現代)と、同グループのKiaが大手商社の双日と組んで日本でミニバンPV5を発売というニュースを提げて初出展しました。

ヒョンデは、IONIQ 5とKONAに加えて今年はスモールEVのインスター(INSTER)を導入しました。インスターは、デザインや基本性能が充実しており284万円からというお手頃の価格でEV購入検討者から注目されており、今回のJMSで発表された「2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー」の10ベストカーにも選出されました。また、同社が20年以上の販売実績をもつFCEVのNEXOの新型を発表し(2026年春発売)、これをブースの中央に据えた展示になっています。

日本ではトヨタ MIRAIが2014年に発売され、現在も第2世代モデルが販売されていますが、燃料の水素価格が高く、充填ステーションも160カ所に限られていることから、昨年の販売台数は700台に届いていません。日本がエネルギー戦略として水素に引き続き力を入れており、それも導入の背景にあるようです。

また、ヒョンデもテスラと同様にオンライン販売だけでなく、ショッピングモールなどにショールームを出していく方針だと今回確認しました。ヒョンデ(当時はヒュンダイと呼称)は2000年代に一度日本に参入・撤退していますが、昨年の販売台数(乗用車)は607台で、今年(1〜9月)は719台(前年同期比+48%)を販売しており、今後徐々に浸透していくかもしれません。

画像: ヒョンデはEVやFCEVのNEXO(写真奥)だけでなく、スポーツとゲーム感覚を具現化したコンセプトカー「インステロイド」を展示。ドイツから担当デザイナーも来日していた。

ヒョンデはEVやFCEVのNEXO(写真奥)だけでなく、スポーツとゲーム感覚を具現化したコンセプトカー「インステロイド」を展示。ドイツから担当デザイナーも来日していた。

Kiaも2024年の世界販売台数は310万台と親会社のヒョンデ(410万台)に劣らぬ規模ですが、R&D資源は共有するもののブランドとしては独立性が強く、デザイン開発などは完全に独立しています。EV2からEV9までほぼフルラインでEVを展開(発売予定含む)していますが、日本で来春発売するPV5は、スケートボードシャシをベースとし、PV3、PV5、PV7と3種類の大きさのモデルを開発しています。こちらは双日の100%出資企業であるKia PBV Japanが、日本のディストリビューターとなり、双日系列のディーラー8店舗程度で来春販売をスタートするとのことです。

画像: KiaのPV5は乗用と商用バンを来春発売する。価格はカーゴが589万円から、パッセンジャーが679万円からとなる。

KiaのPV5は乗用と商用バンを来春発売する。価格はカーゴが589万円から、パッセンジャーが679万円からとなる。

かつて東京モーターショーは、デトロイト、フランクフルトと並んで世界3大自動車ショーのひとつとされ、日米欧の自動車メーカーがこぞって世界初のモデルを発表しましたが、今回のJMSは1980〜1990年代のショーを彷彿させる華やかさが感じられたと、欧米のベテランジャーナリストも報じています。「EVシフトへの回答」といった共通したテーマが影を潜めた分、ハイブリッドからEV、FCEVまでカーボンニュートラルに向けた各社の現状や考え方の多様性が表れていると同時に、マイクロモビリティから空飛ぶクルマ(eVTOL)までさまざまな移動の可能性が見て取れます。

東館の半分が改修中のため、西館から南館まで長い距離を歩きますが、週末を見た限り、ストレッチした分、混雑も幾分緩和されていると感じました。子供の体験コーナーやスタートアップ企業コーナー、最新ADASの試乗などもあり、誰もがお世話になっているモビリティの現在地を確かめるのに足を運ぶ価値は十分ありそうです(11月9日まで開催中)。(了)

●著者プロフィール
丸田靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在を経て、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。

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