フォードが「モデルTの瞬間」の再来と謳うEVピックアップトラックの生産を発表

元テスラ幹部が開発を主導する「ユニバーサルEVプラットフォーム」

ジム・ファーリーCEOは、ルイビルで生産するEVが同社の最も小さいピックアップトラックの「マーベリック（Maverick）」とミッドサイズの「レンジャー（Ranger）」の間に位置し、そのフレキシブルなEVプラットフォームと製造プロセスの革新は、シンプルで頑丈な設計とベルトコンベアによって自動車の大量生産時代を招来した「モデルT」の登場に匹敵し、同社にとって「モデルTモーメント（Model T Moment）」であると宣言しました。

「ユニバーサルEVプラットフォーム」と称された新世代EVの車台の開発は、セグウェイの開発者であり、テスラ モデル3や（断念された）アップルカーの開発に携わったダグ・フィールド（Doug Field）氏を中心に、元テスラのエンジニアやフォード社内から集めた少数精鋭がカリフォルニア州でスカンクチームとして3年間密かにプランを練ってきたものです。

フォードで「EV、デジタル、デザインの総責任者」を務めるフィールド氏が、「EVがより良いクルマだと確信するからこれを開発した」というとおり、自動車の未来はEVとデジタル化にあるとするフォードの信念は変わっていません。

この新EVプラットフォームは、ピックアップトラックやSUV、3列シートモデルなど、合計8モデルを派生できるフレキシビリティを持ち、第1弾の中型ピックアップトラックは、トヨタRAV4よりも室内が広く、フォード・マスタングよりも加速は速く、V2H（ビークル・トゥー・ホーム）で6日間自宅に給電でき、最新のADAS機能「ブルークルーズ」を搭載するなど、デジタル化とネットワーク化においても最先端をいくとされます。

車体前後のフロアをアルミのギガキャスティングで一体成形し、安価なLFPバッテリーをボティの構造体とする「セルツーボディ」の設計は、すでにテスラや中国のBYDなどが採用していますが、レガシーメーカーとしてもっとも大胆な決断は、テスラが2023年の「投資家デー」で、廉価版EV（通称「モデル2」）の生産で導入するとした「アンボックスド」コンセプトに似た、長いコンベアラインを廃したモジュラー式製造方法を採用することです。