「Neue Klasse」の実力はいかに
さて、最も順調に見えるBMWですが、9月4日から始まる「IAAモビリティミュンヘン」の直前に、BEV専用プラットフォーム「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」を採用した新型車をいよいよ正式発表する予定です。
これまでも、「Neue Klasse」ベースのコンセプトカーを2台発表していますが、今回は2025年に生産を開始する3シリーズのセダンとSUVの両BEVモデルの最終デザインの発表になると予想されます。「Neue Klasse」は、コバルト含有率を減らした円筒型の三元系リチウムイオン電池を採用し、エネルギー密度を20%、航続距離を30%向上させ、充電スピードも30%早くなるといわれています。
メルセデスベンツもMMA(Mercedes Modular Architecture)というエントリークラスのBEV専用プラットフォームを発表するとしており、アウディは待ち望まれたQ6 e-tronやA6 e-tronの生産モデルを発表するでしょう。欧州市場攻略に本腰を入れつつある中国勢も、BYDやMG(SAIC傘下)、Xpengなどが出展します。
ミュンヘンモーターショーの主役はドイツ勢、中国勢にメガIT
欧州市場は、今年上半期は前年同期比+17%の販売増とはなっていますが、インフレはなかなか沈静化せず、エネルギーコストも高止まりしています。BEVの販売比率においても、8割のノルウェーを筆頭に北欧諸国では3分の1以上、ドイツ、イギリス、フランスでは15%を超えていますが、スペインやイタリアなどの南欧や東欧諸国はまだ4〜5%にとどまっており、HEV[※3]がシェアを伸ばしています。※3:Hybrid Electric Vehicle
かつて世界の3大モーターショーといわれた東京モーターショーやデトロイトの北米国際自動車ショーと同様に、ドイツのモーターショーも海外勢の参加は少なくなり、今回のミュンヘンショーもフランス勢はルノーのみ、イタリアや日本メーカーの出展はゼロです。
一方テスラ、BYD、Xpeng、Lucidなどの新興EV勢、アマゾンやメタ、LGやCATL(EV電池最大手)、クアルコムなどITや電機、ソフトウェアの大手が参加する点は、ラスベガスのCESに似ています。ドイツメーカーを始め、走るスマホ化する自動車に未来について、各社がどのようなモデルや技術を発表するのか注目されます(了)
●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。