2023年の4〜6月期の自動車メーカー各社の決算が出揃いましたが、日・米・欧の主要各社は揃って前年同期よりかなり良い数字を出しています。ただ、昨年の4〜6月は半導体不足に加え、上海の2カ月のロックダウンの影響で、部品不足やコンテナ輸送の混乱などがあり各社減産を余儀なくされたので、前年同期との比較だけでは実情は必ずしも明らかではありません。ここでは、ドイツプレミアムメーカー3社の上半期(1〜6月)の数字を見ながら、販売の現状や電動化戦略の進捗を比較してみます。(タイトル写真は「BMW 760i xDrive」)

3社とも順調に回復するも、BMWの好調ぶりが目をひく

BMW、メルセデス・ベンツ(乗用車)、アウディの3社の売上高、税引き前利益(EBIT)、世界販売台数の数字は下表の通りですが、この3つの数字で均等に成績を伸ばしているのはBMWです。

販売台数は121万台とメルセデスに20万台の差をつけ、売上高も前年同期比で10%以上の成長を遂げてトップです。税引き前利益はマージン率13.5%のメルセデスに劣りますが、SUV系のX3/X4シリーズ(約20万台)やセダン系の3シリーズ/4シリーズ(26万台)などミッドサイズクラスを中心に上下のラインアップがバランスよく売れています。

アウディは販売台数の増加率は大きいものの、台数の割には売上高がライバル2社よりかなり少なく、販売ミックスが低価格帯に寄っていることが伺えます。税引き前利益は前年同期比31%減と大きく減っていますが、これは原材料購買のヘッジ取引によるマイナスが要因のようです。

画像1: 各社の決算発表資料より作成

各社の決算発表資料より作成

EV販売でもBMWがリードする

3社の状況をEVの販売で見てみると次表のようになります。ここでもBMWがBEV[※1]の販売台数(15万2000台)でトップで比率は12.6%。メルセデスも同11%で両社ともに前年同期比で倍増しています(アウディは同8.3%で増加率は50%にとどまる)。

BMWは2023年通年のBEV販売比率を15%と予測していますが(2024年は20%)、新型i4やiXシリーズの好調ぶりや、発売されたばかりの新型5シリーズの「i5」を考えると、これは十分達成可能かもしれません。MINIブランドも来年「カントリーマン」など新型BEVが続々と登場します。※1:Battery Electric Vehicleの略

画像: 5月に発表されたばかりの新型5シリーズのBEV、「BMW i5」。

5月に発表されたばかりの新型5シリーズのBEV、「BMW i5」。

さらにPHEV[※2]を加えると、販売全体に対する上半期のEV比率はBMWが20.2%、メルセデスが18.4%で、すでに5台に1台の割合です(アウディはPHEVの販売台数を発表していない)。 BMWはほとんどの車種で、エンジン車、PHEV、BEVの3種類を提供するフレキシブルパワートレイン戦略を進めており、これが世界的に上手くいっていることが伺えます。※2:Plug-in Hybrid Electric Vehicleの略

画像2: 各社の決算発表資料より作成

各社の決算発表資料より作成

各社の電動化のロードマップとしては、メルセデスが一番アグレッシブで、2030年に新車販売の100%をBEVに転換(但し市場環境が許す限りにおいて、という条件付き)、アウディは2033年に完全BEV化するのに対し、BMWは2030年で半数がBEVという一番保守的な計画ですが、実際のEVの販売ではBMWがリードしている状況なのです。

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