去る6月8日、トヨタ自動車の東富士研究所で開催された「Toyota Technical Workshop」。夢の電池と言われる「全固体電池」が2027年に実車に搭載されることが明らかにされるやいなや、投資家筋も巻き込んで大騒ぎとなったのはご存じの通りだ。もっとも、全固体電池以上に注目すべきは、あのテクノロジーだった……。(タイトル写真は全固体電池の試作品)

航続距離延伸を実現する技術群

航続距離は電池の性能向上だけで実現されるわけではない。別稿でも紹介したが、アルミ一体成型によるギガキャストの導入、さらにインバーターやモーターを一体化した「eAxel」の小型化(システム電圧の向上)による軽量化も重要な役割を果たす。

画像: 左が現行bZ4Xに搭載される「eAxel」。対して次世代のBEVでは一律に小型化され、デザインの自由度と空気抵抗低減を両立する。

左が現行bZ4Xに搭載される「eAxel」。対して次世代のBEVでは一律に小型化され、デザインの自由度と空気抵抗低減を両立する。

インバーターも進化。そこに採用されるパワー半導体に、従来のシリコン(Si)ではなくシリコンと炭素を組み合わせた「SiCウェハ」がいよいよ本格的に採用される。トヨタとデンソーは1980年代から研究を開始しており、レクサスRZでようやく実用化されたが、今後登場する次世代のBEVで普及を加速させるのだ。電力損失割合を5割も削減。10%の電費向上を目指している。

画像: デンソーとの長年の研究開発で生み出されたSiCパワー半導体を次世代BEVでは標準化。電力損失割合を5割も削減し10%の電費向上を実現する。

デンソーとの長年の研究開発で生み出されたSiCパワー半導体を次世代BEVでは標準化。電力損失割合を5割も削減し10%の電費向上を実現する。

さらに注目すべきが空力性能だ。三菱重工業(株)宇宙事業部と共同で開発している新たな空気抵抗削減技術により、クルマのデザイン/パッケージと空力の両立を目指しているという。最終目標はCd値0.1の実現だ。空気抵抗までも視野に入れて航続距離をさらに伸ばす。

画像: 三菱重工業の宇宙事業部との共同研究という意表をつく組み合わせで、最終的にはCd値0.1の実現を目指す。

三菱重工業の宇宙事業部との共同研究という意表をつく組み合わせで、最終的にはCd値0.1の実現を目指す。

バッテリーの性能向上を活かす超急速充電設備の整備が課題

これまで説明してきた次世代バッテリー群はトヨタならではの技術が随所に採用され、海外勢を含めたライバルに伍して戦っていけるポテンシャルを持つ。角型NMCリチウムイオンの性能向上と量産化を核に、普及価格帯にはLEPバイポーラ、ミッドレンジにはNiバイポーラ、上級車には角型NMCリチウムイオンとNiバイポーラを使い分ける。

さらにレクサスのハイエンド向けに全固体電池が使われるだろう。とくにバイポーラ技術は、最大のライバルと言えるテスラやフォルクスワーゲンはもちろん、中国勢も手つかずだ。トヨタの勝機は十分にある。

一方では、その優れたポテンシャルを我々が実感するには、とくに国内の急速充電インフラがまだ追い付いていない。より高性能化される必要があるのだ(150kW級でもまだ足りない。テスラのV3スーパーチャージャーはすでに250kWだ)。

今後登場する次世代のBEVは、欧米や中国で主流になる350kW級以上の急速充電出力に対応しているはず。日本国内で次世代バッテリーのメリットを享受するには、よりハイスペックな急速充電設備の普及が不可欠となる。

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