去る6月8日、トヨタ自動車の東富士研究所で開催された「Toyota Technical Workshop」。夢の電池と言われる「全固体電池」が2027年に実車に搭載されることが明らかにされるやいなや、投資家筋も巻き込んで大騒ぎとなったのはご存じの通りだ。もっとも、全固体電池以上に注目すべきは、あのテクノロジーだった……。(タイトル写真は全固体電池の試作品)

全貌が明かされた次世代バッテリー戦略

「Toyota Technical Workshop」では、BEV(バッテリーEV)の要である次世代バッテリーについて、従来よりも大きく踏み込んだ説明があった。トヨタでは次世代バッテリーとして、4つのソリューションを用意している。
・「次世代電池(パフォーマンス版)」
・「次世代電池(普及版)」
・「次世代電池(ハイパフォーマンス版)」
・「全固体電池」
全固体電池が大変な反響を呼んだが、実はほかの3つも注目すべき要素技術が織り込まれている。それぞれの特徴を順番に見ていこう。なお、今回の発表で示された航続距離は、中国CLTCモードであり、車両の空力向上や軽量化などの向上分を含む数値である。

画像: 次世代バッテリー戦略を見ると、その性能向上代とコスト低減の凄さがよくわかる。正極素材と「バイポーラ構造」が重要なファクターとなっているところに注目したい。

次世代バッテリー戦略を見ると、その性能向上代とコスト低減の凄さがよくわかる。正極素材と「バイポーラ構造」が重要なファクターとなっているところに注目したい。

次世代電池(パフォーマンス版)

2026年に導入される「次世代BEV」から搭載が始まる角型のNCMリチウムイオン電池。トヨタとパナソニックの合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(以下、PPES)と共同で開発中だ。

驚くべきはその性能の高さで、一充電あたりの航続距離はついに1000kmを超える(軽量化・空力向上要素を含む)。bZ4Xは615kmなのでその差は歴然だ。しかも製造コストはbZ4Xより20%引き下げられ、急速充電にかかる時間(SOC=10〜80%)は20分以下と大幅に短縮される。今後どこまで小型・軽量化を進めエネルギー密度を上げてくるかに注目である。

画像: 次世代電池(パフォーマンス版)は、2026年に発売予定の次世代BEV(レクサスのラージセダン)から搭載が始まる。

次世代電池(パフォーマンス版)は、2026年に発売予定の次世代BEV(レクサスのラージセダン)から搭載が始まる。

次世代電池(普及版)→LFPリチウムイオン+バイポーラ構造

2026年〜2027年の導入を目指すのが、材料コストを抑えたLFP(リン酸鉄リチウム)系バッテリー。アクア、レクサスRX、クラウンシリーズなどのハイブリッド車用ニッケル水素バッテリーに採用されているバイポーラ構造(集電体の表裏に正極材と負極材を塗布したコンパクトな構造)をリチウムイオンバッテリーにも応用する。

bZ4X比で航続距離は20%向上する一方、コストは40%低減を実現する見込み。急速充電の所要時間(SOC=10〜80%)は、30分以下を目指し、主に普及価格帯のBEVへの搭載を予定している。

豊田自動織機との共同開発だが、バイポーラ構造は製造難易度が高く、現在のところ車載用はトヨタ/豊田自動織機しか実用化できていない。この構造と安価なLFPと組み合わせて技術的/コスト的なアドバンテージとして、2026年前後と言われるBEVの爆発的普及期に備えている。

画像: 2021年7月に発売されたアクアに搭載されてデビューしたバイポーラ型ニッケル水素バッテリー。

2021年7月に発売されたアクアに搭載されてデビューしたバイポーラ型ニッケル水素バッテリー。

画像: 図の左側が従来構造(モノポーラ)。バイポーラ構造ではコンパクト化が可能になるので、同一スペースならばよりエネルギー密度を高めることができる。

図の左側が従来構造(モノポーラ)。バイポーラ構造ではコンパクト化が可能になるので、同一スペースならばよりエネルギー密度を高めることができる。

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