2026年に150万台/年、2030年には350万台/年という大胆なBEV増販計画をコミットしたトヨタ。果たしてそんなことが可能なのだろうか。去る6月8日に開催された「Toyota Technical Workshop 2023」で明かされた次世代技術群を踏まえ、計画達成までのロードマップを3回にわたり紹介、検証していく。今回はBEV(バッテリーEV)の屋台骨となるプラットフォーム戦略にフォーカスした。(タイトル写真は2026年に発売される次世代BEVのイメージ)

次世代BEV専用プラットフォーム

そして迎える2026年に満を持して登場するのが、次世代BEV専用プラットフォームだ。これこそ、従来の車台という概念を超え、クルマ・モノづくり・仕事の進め方、そしてトヨタ生産工場の風景を一変させる起爆剤となる。

最大の特徴は「ギガキャスト」の採用だ。車台はe-TNGAと同じく3モジュラー化されるが、フロントおよびリアセクションはギガキャストと呼ばれる一体成形のアルミダイキャスト製となる。ギガキャストはテスラが2020年にモデルYの生産立ち上げに際して初めて導入した製法であり、一部の中国勢(ZeeKrやNioなど)も追従、今後はボルボやフォルクスワーゲンも導入を予定している。

画像: 写真左側は従来工法による86点もの部品/33工程を経てようやく完成させる。対して写真右側のギガキャストは部品は1点で工程もひとつだけ。その差は歴然だ。アルミ素材への置換による軽量化も絶大なメリットと言える。

写真左側は従来工法による86点もの部品/33工程を経てようやく完成させる。対して写真右側のギガキャストは部品は1点で工程もひとつだけ。その差は歴然だ。アルミ素材への置換による軽量化も絶大なメリットと言える。

従来は数十点にも及んだスチール製の板金部品(フロントで約90点、リアでおよそ85点)を溶接・組み立てしていた工程がなくなり、それぞれのモジュールに統合されて一体鋳造される。生産の工程やコストが大幅に圧縮されると同時に、航続距離延伸の重要なファクターのひとつである軽量化への貢献も絶大だ。

2026年にクルマ作りが根本から変わる

ベルトコンベアがない自動車工場

生産工程でも大きな変革がもたらされる。組み立て中の車両は、車台に組み込んだ無線端末により自走して次工程に移動する(自走式)。つまり、自動車の工場では当たり前だったベルトコンベアが姿を消す。同時に狭いスペースに人が乗り込んで、インストパネルやシートを始めとする重い内装材を組み込む工程も大幅に低減される。

画像: 次世代BEV専用プラットフォームの導入によって、自動車工場の風景が一変する。

次世代BEV専用プラットフォームの導入によって、自動車工場の風景が一変する。

その結果、生産までの準備期間・生産工程・工場投資などが従来の2分の1まで圧縮され、かかっていたコストも大幅に短縮される。プレス機や溶接ロボットなどの見慣れた大規模生産設備が工場から姿を消し、代わって小さなビル一棟分と揶揄されるほど巨大な高圧ダイキャストマシンや冷却装置が鎮座する世界。いずれにせよ工場の景色は一変することになるだろう。2026年には稼働を始める。

次回はBEVを支えるキーファクターであり、世間の関心も高いバッテリー戦略について深堀りしたい。

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