2030年の目標達成を担う3種類のプラットフォーム
トヨタはどうやら3種類のプラットフォームを使い分けるようだ。BEV専用の「e-TNGA」、その先にある「次世代BEV専用プラットフォーム」、既存のTNGAをベースにBEVを始め既存車両でさまざまな電動モデルを作り分ける「マルチパスウェイプラットフォーム」である。
2030年には目標台数の半数近くとなるおよそ170万台が、次世代BEV専用プラットフォームを使うBEVファクトリーから誕生する。その内訳は、MPV系が12万台、ミッドサイズSUVが36万台、ラージSUVが60万台、コンパクト系で36万台、セダン系が24万台だ。残る180万台はe-TNGAとマルチパスウェイプラットフォームを使う。
e-TNGA
bZ4Xで初めて採用されたe-TNGAは、その後レクサスRZやbZ3にも採用されたBEV専用のアーキテクチャーだ。この車台は、フロント、センター、リアに3分割されたモジュール構造を採用する。フロントやリアのモーターユニットやフード内のレイアウト、前輪に対するドライバー、電池の幅は固定。ホイールベースや電池の搭載量、オーバーハングなどを変動することによって、さまざまなボディタイプ/サイズに対応する。当面、BEV専用の新型車にはこのプラットフォームが採用されるに違いない。
マルチパスウェイプラットフォーム
一方、マルチパスウェイプラットフォームは、BEV専用の車台ではない。世界中に点在するトヨタ工場で既存のTNGAアーキテクチャーを使ってBEVを作る技術基盤だ。内燃機関を搭載する(ハイブリッドを含む)既存車ラインナップに新たにBEVを追加することも可能であり、トヨタはその技術をすでに蓄積している。
TNGA-C(レクサス風に言えばGA-C)を使いながら、2L直4エンジン搭載車から2.5Lハイブリッド、そしてBEVまで揃えるレクサスUXはその一例である。2024年には日本でも登場すると予想されるbZコンパクトSUV(いわゆるC-HR後継車)や、2025年から北米で生産が始まるBEVの3列シートSUVにもマルチパスウェイプラットフォームの技術が使われるはずだ。
さらに言えば、2023年度内にタイで生産が始まるハイラックスBEVや、広島G7に際して公開され2024年に発売される軽商用BEVのようにTNGAを採用していないクルマもBEV化することができる。また、2024年中にはダイハツと共同開発した小型車用プラットフォームを採用するBEVも新興国向けに投入されるはずだ。
こうした作り分けの技術は、まずは2026年に定めた150万台達成の切り札であり、2030年の350万台に向けた地ならしともいえるだろう。2023年〜2026年にかけて新型BEVを10モデル投入する計画だが、e-TNGA採用車とともに既存のアーキテクチャーや設備を活用したBEVを増やすことで、150万台の目標達成は不可能ではなくなる。2024年には日本でも登場すると予想されるbZコンパクトSUV(いわゆるC-HR後継車)や、2025年から北米で生産が始まるBEVの3列シートSUVにも、マルチパスウェイプラットフォームの技術が使われるはずだ。