テスラユーザーに人気の「オートパイロット」と「FSD」
次に、電動化とともに今後のモビリティの主眼の一つである自動運転について、テスラの株主総会での発表などから見ていきたいと思います。
テスラの「オートパイロット(Autopilot)」は2014年に導入、「FSD(Full Self Driving)」は2020年にβ(ベータ)版として試供が始まりましたが、常に毀誉褒貶がついてまわっています。ドライバーによる監視が必要な「Level2」の運転支援システムであるにも関わらず、自動運転を思わせる名称を冠していることもあってか、システムを過信したり、その限界を試したオーナーが事故に遭う事例が問題視され、FSDの呼称は誇大広告だとする訴訟も起きています。
今年2月には、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)がFSDベータを搭載したテスラ車が交通規則に違反した運行をするとして、2016年式以降の36万台のリコールを命じ、テスラはOTA(オーバー・ジ・エア)でソフトウェアの改善を実施することになりました。
オートパイロットはマニュアル運転の4倍安全?
5月の株主総会では、その直前に出された「インパクトレポート2022」にも掲載されているデータを元に、マスクCEOがテスラ車の安全性を訴えました。テスラの各モデルが、米国のNCAP、Euro-NCAP、IIHS(米国道路安全保障協会)といった政府や第三者機関の衝突安全性テストで「5つ星」などの最高の評価を受けていることを強調、テスラ車から収集されている衝突データを分析して、緊急自動ブレーキやエアバッグの展開、シートベルトプリテンショナーなどのアルゴリズムを最適化してOTAでアップデートし、日々安全性を改善していると述べました。
マスクCEOは、2022年1年間のオートパイロットとFSDベータ作動中の事故は、それぞれ550万マイル走行につき1回、320万マイル走行に1回に過ぎず、これらのシステムを使わない場合(147万マイルに1回)よりはるかに少なく、NHTSAの全米の事故率(65万マイル走行につき1回)と比べて4倍以上安全だとしています。テスラは、2018年の第3四半期以降、四半期ごとに事故率を公表しており、これによれば過去5年間に事故率は半減しているようです。
しかし、このデータについては、NHTSAの事故データは「警察に報告された事故で、一方のクルマが牽引された事故」と定義されているのに対し、テスラのデータは、エアバッグなどの安全装置が作動したケースとしており、対等な比較になっていないため、ミスリーディングだという見方もあります。