「混在交通」は、多摩大学でモビリティを研究する樋笠尭士(ひかさ たかし)准教授らが2024年に科学技術振興機構(JST)の助成を受けてスタートした研究プロジェクトで、日本発のコンセプトです。今回は、2026年9月17日に東京都多摩市の多摩大学で開かれた「混在交通の現在と将来」という日米合同シンポジウムの内容から報告します。(写真は、撮影に応じるシンポジウムの登壇者)
狭くなる道路でどう共存するか
歩行者が安全に移動するための歩道は近年、走行できるモビリティの種類が増えて煩雑化しています。電動モビリティの進化に伴って、2023年に電動キックボードをはじめとする特定小型原付の走行が認可されると都市部でその利用者が急増、歩道の制限速度(6km/h)を守らない利用者があらわれたり、スピードの出る電動アシスト付き自転車が普及して歩行者の脅威にもなっています。さらにコロナ禍でフードデリバリーサービスの自転車も増えたほか、今後は自動搬送ロボットも歩道上に登場するでしょう。
一方の車道も特定小型原付や自転車の交通量が増加。またウエイモ(Waymo)やウーバー(Uber)が都市部でロボタクシーの運行を計画しているほか、地方ではバス路線の廃止や減便による「交通空白」が問題となって自動運転バスの実証実験が各地で行われています。
このように道路はかつてなく混雑し、相対的に狭くなっているというのが利用者の実感で、事故の懸念から、電動キックボードや自動運転車(AV)などに対する反感が高まりやすく、さまざまな道路利用者が安全に空間をシェアする「混在交通」の最適化のニーズがこれまでになく高まっています。

テスラやアマゾン傘下のZooXもロボタクシーを走らせるオースティンでは、市民が苦情を報告する回線「311」が活用されている。
AV導入で鍵となるのは地域住民の理解
今回のシンポジウムでは、AVの先進地域であるカリフォルニア州のカリフォルニア大学(UC)バークレー校の研究者やモビリティサービス企業の経営者が、AV導入の経験談を披露し、地域の合意形成の大切さを説きました。同州のサンフランシスコでは、今やタクシー利用の27%がウエイモのライドサービスというほどロボタクシーが市民の足として定着していますが、ここに至るまでにはさまざまなトラブルを経験しています。消防車や救急車など緊急車両の進路を妨害したり、停電時に一斉に動かなくなって渋滞を引き起こしたり、路上で暴徒に破壊されたりなど多難の歴史がありました。
そのサンフランシスコや、テキサス州オースティン市などロボタクシー先進地域でAV導入を支援するUrban Innovate社のアンリエッタ・コルネ氏は、ソーシャルメディアのリスニングをとおして、ロボタクシーの利用者や非利用者の声を吸い上げてAIで分析し、地元自治体や運営企業にフィードバックしています。
また、UCバークレー校のペギー・ワン氏が、ベイエリア東部のコントラ・コスタ郡での10万kmにおよぶ自動運転バスの実証における「歩行者との衝突回避のための緊急停止ブレーキ」のデータを分析したところ、最も多かったのは、歩行者の信号無視や横断歩道以外を渡ろうとしたケースでした。8割以上は、システムが危険を検知して自動停止しましたが、オペレーターが介入してブレーキをかけたケースも150回ほどありました。

テスラやアマゾン傘下のZooXもロボタクシーを走らせるオースティンでは、市民が苦情を報告する回線「311」が活用されている。

サンフランシスコにUrban Innovate社を設立したアンリエッタ・コルネ氏(中央)は、かつてドイツのアウディやBMWで研究に携わった経験も。その右はUCバークレー校のペギー・ワン氏。
