「混在交通」は、多摩大学でモビリティを研究する樋笠尭士(ひかさ たかし)准教授らが2024年に科学技術振興機構(JST)の助成を受けてスタートした研究プロジェクトで、日本発のコンセプトです。今回は、2026年9月17日に東京都多摩市の多摩大学で開かれた「混在交通の現在と将来」という日米合同シンポジウムの内容から報告します。(写真は、撮影に応じるシンポジウムの登壇者)
新モビリティを円滑に導入するためには
動きが緩慢で邪魔になると思われがちな自動配送ロボットや自動運転バスですが、こうしたAVの登場によって路上で増える不安や軋轢を減らし、AVをスムーズに導入するにはどうしたら良いでしょうか。
樋笠氏は、「見守る」という態度が大切だと言います。ロサンゼルスやシカゴでは、「COCO」というフードデリバリーロボットが路上で子どもたちに人気のようですが、日本の小学生対象の「混在交通」の授業でも、電動車椅子やデリバリーロボットを優先すべきという意見が多いそうです。子どもの目線では、自分よりスピードの遅い移動体は、「愛しい」ものとして映るのでしょう。また、自動運転バスについては、「車両に近づきすぎない、路上駐車をしない」などAVの苦手な部分を大人が理解し、協力する必要があるとのことです。

COCOは米国で1000台以上のフードデリバリーロボットを導入済み(Coco Robotics社インスタグラムより)
地域を巻き込んだ取り組みとしては、「レベル4」の自動運転路線バス導入を目指す長野県塩尻市が先進的な取り組みをしています。認知向上と乗車促進を目的に、沿線の大型スーパーで使える乗車ポイントを付与したり、IT企業(アイサンテクノロジー)の支援を得て、地元の主婦数十人のリモートワークで走行路線の高精度マップを作成したりするなど、地元の商店や住民を巻き込んで理解と受容を促しています。

塩尻市は地域DXの一環として駅や大型商業施設などを巡回する5.5kmの自動運転バスの運行を目指す。
地方の「交通難民」はAVで解決するのか?
樋笠氏は、自動運転路線バス導入を目指す東京都新宿区や同瑞穂町、川崎市、多摩市など複数の自治体からの相談に乗っており、都市部と過疎地の両方を俯瞰して見る立場にあります。ただ、地方で減便や廃止が加速する路線バスは、「AV化すれば解決するという単純なものではない」といいます。「高齢者が人手を借りずに乗り降りできるか」「ICカードで料金決済できるか」という問題や、そもそも高価なAVバス導入は補助金なしでは難しく、運行を開始しても継続的な住民の負担も必要です。AVバスよりも、公共や民間のライドシェアが向いているなど、地域によって「交通難民」の解消の処方箋は異なってくるといいます。
