成長の鍵である米国は関税が足かせ
米国内にVW ID.4と同アトラスを生産するテネシー工場しか持たないVWは、メキシコで生産するジェッタやティグアン、アウディQ5などの主力車種を米国に輸出しています。1年前からトランプ政権に27.5%の高関税をかけられ、米国内の生産拠点を増設するかが焦点のひとつになっています。USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の改定協議が今年行われますが、その動向が注視されます。
また、欧州からの対米国輸出には日本と同様に15%の関税がかかっています。「高関税も払いつつ、同時に米国生産に新規投資を行うことはできない」とVWのオリバー・ブルーメCEOは語っていますが、アウディ車ついては、2027年に生産開始予定の新しいピックアップブランド、スカウトのサウスカロライナ州の工場で生産することを検討していると同CEOは述べました。VWグループの米国の2025年の販売台数は57万6000台(−12%)、市場シェアは4%で、これを10%にする長期目標を掲げていますが、その目標達成の時期はさらに後ろ倒しになりそうです。
「ドイツを再発明しないといけない」
収益の悪化に苦しむドイツ3社に共通するのは、中国市場の立て直し、SDV開発とICE継続への投資、関税対策などです。EV戦略修正による損失計上は峠を越えましたが、他国に比べて2割以上高いと言われるドイツ生産のコスト削減、デジタル技術対応などで抜本的な構造変革が必須となっています。それでも本拠地の欧州市場が年間1300万台の規模を持ち、安定的にビジネスが展開できる点は、収益の米国依存が高まっている日本メーカーに比べるとレジリエンスが高いといえそうです。
3月17日に決算会見を行ったアウディのゲルノート・デルナーCEOは、「2025年はテクノロジー、関税、地政学などのプレッシャーが強大だったが、ひとことで言えば、アウディにとって『新たな始まり』の1年だった。中国では『4文字』アウディのE5スポーツバックを発売し、米国のリヴィアンとのソフトウエア基盤の開発も進んでいる」と述べました。
「今は新たなトレンドは米国と中国で生まれ、ドイツと欧州は後塵を拝している。アウディを、ドイツそのものを『再発明(reinvent)』しなければならない」という言葉に、ドイツ自動車メーカーの現状認識と復活への決意が現れているようです。(了)

7000人の人員削減をしているアウディは今年F1に初参戦し、初戦でいきなり10位に食い込んだ。アウディ A2 e-tronの発売も予告。(写真はデルナーCEO)
●著者プロフィール
丸田靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在を経て、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。



