※IAAはInternationale Automobil-Ausstellung(国際自動車ショー)の略。120年以上の歴史を持ち、長年フランクフルトで開催されていたが、2021年からミュンヘンに移りモビリティショーに意匠替えした。
怒涛のように出展してきた中国メーカーのいく末は?
最後になりましたが、今回のIAAモビリティは北京や上海のショーかと見紛うほど、多くの中国自動車メーカーが出展してきました。2年前から出展しているBYDや吉利汽車傘下のスマートやポールスターはもちろん、最近好調のVWの中国パートナーのシャオペン(Xpeng)やステランティスの出資を受けたローコスト&ハイバリューのリープモーター。輸出トップのチェリー(Chery)の欧州攻略ブランドのオモダ(Omoda)とジェイクー(Jaecoo)、中国で欧州プレミアムブランドからシェアを奪っているファーウェイ系のアイトー(AITO)、国有企業の第一汽車の「ホンチー(紅旗)」に長安汽車系の高級ブランド「アバター(Avatr)」などが目白押しでした。
これらのブランドがBYDのように、長期的に多額の投資を続ける覚悟と体力があるかどうかはまだ分かりませんし、最終的に欧州全体で残るブランドは2つか3つ、多くて4〜5ブランドではないでしょうか(VWグループのセアトは南欧、シュコダはドイツ・東欧といった風に、現地生産拠点に近いエリア主体で販売するケースも考えられます。)

マツダとも提携する中国国有企業の長安汽車(Changan)は、プレミアムブランドのアバター(Avatr)などを大々的に展示(写真はIAAモビリティ)
2031年までミュンヘンで開催決定
オープンスペースとメッセの行き来は30分程度ですが、それでもこれだけの数のOEMやサプライヤーのブースを丁寧に見て回り、さらに試乗となると3日間の取材でも時間が足りず、前回は乗れたe-bikeや電動キックボードも今回は試乗できませんでした。時折小雨の降る肌寒い曇天にもかかわらず、オープンスペースは朝9時から夜21時まで老若男女の市民で賑わい、メッセ会場も後半になっても訪問者が途切れませんでした。前回はコンサートを多く催していましたが、今回は一番遠いケーニッヒプラザのコンサートはやめて、中心部のオデオンプラッツで規模を縮小して行い、その代わり、周囲の歴史的建物にプロジェクションマッピングを投影して、夜遅くまで来場者の目を楽しませていました。

中心部のオデオンプラッツのプロジェクションマッピング(写真はIAAモビリティ)
ドイツの首相をはじめ、連邦政府や州の議員や閣僚も多く訪れ、地方自治体も一体になって実施されるイベントは、「2年に一度の祭典」というに相応しい内容と人気を獲得したといえ、主催のドイツ自動車工業会(VDA)は、会期終了と同時に3回先の2031年までミュンヘン市と契約を更新したと発表しました。10月に開催される「ジャパンモビリティショー」でも、ミュンヘンのような斬新なコンセプトとモビリティ社会の未来に向けた提案を期待したいものです。(了)

約1km離れたケーニッヒプラッツのブースへの移動は大変だったが、今年はe-bikeで無料送迎してくれた(撮影 筆者)
●著者プロフィール
丸田靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在を経て、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。



