日本市場に参入してちょうど2年半が経過したBYDの販売がここにきて躍進しています。2025年6月は512台の月間新記録を達成し、累計の販売台数も5300台を超えました。4月に発売したクロスオーバーSUVの「シーライオン7」に加え、4月の価格改定で「ATTO3」と「ドルフィン」を30万円以上値下げしたのが効いているようです。BYDジャパンが7月7日に実施した「バッテリーとSDVに関する技術説明会」から、LFPバッテリーの話を中心にお伝えします。

LFPは100%まで充電すべし

BYDによれば、LFPバッテリーは三元系電池と違って、週に一度は100%まで充電した方がよく、さらに3カ月から半年に一度は、SoC(充電率)が10%以下の状態から100%までフル充電することで、各セルの性能が均一化し、バッテリーを長持ちさせることができるそうです。自宅で充電できないユーザーには、入庫時に「バッテリーキャリブレーション」と呼ぶサービスを用意して、LFPの性能を長持ちさせるサポートをしています。

スマートモビリティJPでも、メルセデス・ベンツやBMWが米国のファクトリアルやソリッドパワーといった全個体電池のスタートアップのバッテリーを搭載した試作車の走行試験の開始について紹介していますが、全個体電池は2027年〜2030年に登場しても当面はハイエンドの車両向けになるといわれています。世界の全体需要としてはLFPバッテリー搭載EVが着実に主流になり、BYDのバッテリーサプライヤーとしての重要性も高まっていくでしょう。

バッテリーの二次利用やリサイクルにも期待したい

EVシフトを圧倒的にリードする中国ですが、リチウムやコバルトなど電極材料の精錬や、モーターなどに必須のレアアースの生産が中国に依存していることや、これらのレアメタルの生産過程で深刻な環境汚染があることも問題とされています。今回の説明会では、バッテリーの二次利用やリサイクルについては具体的な話はなかったものの、これらにおいても、EVの世界的リーダーになろうというメーカーとして責任ある対応が取ることが、BYDの製品が世界の市場が受け入れる上でポイントになってくるでしょう。

長年テスラの技術開発責任者だったJ.B.ストラウベル氏が2019年にネバダ州に設立したレッドウッドマテリアルは、GMやトヨタ、VWやテスラの使用済みEVのバッテリー(年間25万台分)を引き取って二次利用したり、原材料に還元してリサイクルする事業を進めています。そうした動きが中国のバッテリーメーカーの中からも出てくることを期待したいものです。

画像: レッドウッドマテリアルは、ネバダ州リノ市郊外に使用済みEV電池を二次利用した蓄電池システムを設置した。隣接する太陽光発電とともに63MWhの電力をデータセンターに供給する(写真は同社ホームページより)。

レッドウッドマテリアルは、ネバダ州リノ市郊外に使用済みEV電池を二次利用した蓄電池システムを設置した。隣接する太陽光発電とともに63MWhの電力をデータセンターに供給する(写真は同社ホームページより)。

●著者プロフィール
丸田靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在を経て、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。

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