日本市場に参入してちょうど2年半が経過したBYDの販売がここにきて躍進しています。2025年6月は512台の月間新記録を達成し、累計の販売台数も5300台を超えました。4月に発売したクロスオーバーSUVの「シーライオン7」に加え、4月の価格改定で「ATTO3」と「ドルフィン」を30万円以上値下げしたのが効いているようです。BYDジャパンが7月7日に実施した「バッテリーとSDVに関する技術説明会」から、LFPバッテリーの話を中心にお伝えします。

LFPはなぜ安全か

LFPのもうひとつの利点は三元系に比べて安全性が高いことで、これは正極材のリン酸(PO4)が安定した構造を持つためで、高温になっても結晶構造の崩壊による酸素放出が起こらず、熱暴走しにくいためです。BYDはブレードバッテリーの釘刺し試験のビデオを公開していますが、三元系電池のモジュールは一瞬にして爆発的に燃えるのに対し、ブレードバッテリーは発火しません。昨年、韓国仁川市のマンションの駐車場でEVの爆発的発火から100台以上の車両が全焼したり、EVを何百台も積載した自動車専用船が火災で沈没するなどのニュースに接する消費者にとって、車載電池の安全性は懸念材料です。

画像: LFPのリン酸鉄の構造が安定しており、充放電を繰り返しても安全だ(BYDジャパン説明資料より)。

LFPのリン酸鉄の構造が安定しており、充放電を繰り返しても安全だ(BYDジャパン説明資料より)。

さらにLFPは、放充電サイクルが3000回以上と三元系(1500〜2000回)に比べて耐久性に優れます。この特性により、LFPは二次利用でもニーズが高く、世界で順調に伸びている蓄電池システム(BESS)市場では8割がLFPを採用しています。

さらに、劣るとされていたエネルギー密度も180〜190kW/kgまで向上しており、CATLの最新のLFPの神行電池プラス(Shenxing Plus)は三元系の中位クラスの205Wh/kgを実現しています。

「10年30万km」業界最強のバッテリー保証

BYDがブレードバッテリーに自信を持っている証拠が、基本保証の「8年15万km」を2年間延長して、「10年30万kmの延長保証(有料)」を提供し始めたことでしょう。さらに驚くのは、駆動モーターやパワーエレクトロニクス、BMS(バッテリーマネジメントシステム)やオンボードチャージャーなど「8 in 1」といわれるEV特有の高電圧部品にも8年15万kmとバッテリーと同期間の保証がされていることです。一般保証も多くの自動車メーカーが3年6万km程度のところを「4年10万km」としています。

画像: エンジン車のパワートレーン系に相当するバッテリーと高電圧部品に8年15万kmの保証がつく(BYD説明資料より)。

エンジン車のパワートレーン系に相当するバッテリーと高電圧部品に8年15万kmの保証がつく(BYD説明資料より)。

日本のEV販売シェアは2025年の上半期でわずか1.4%と相変わらず低空飛行が続いていますが、BYDジャパンは5600人へのアンケート調査から、新車価格のみならず、バッテリーの劣化や下取り価格の懸念がEV購入を躊躇する大きな理由であることを把握、中古車価格の維持のための対策を打っています。その鍵になるのが、SoHなどバッテリーの状態を正しく評価することで、BYDジャパンは独自に診断ツールを開発して試験的に運用を開始しています。

SoHを始め、平均電圧、放電電力などの主要な性能パラメータを診断し、バッテリーの状態を正確に評価することで、中古車査定で適切な価格をつけられるというわけです。バッテリーは、いわばエンジンに相当するクルマの心臓部です。定期点検などでSoHを診断してもらえればユーザーも安心して乗り続けることができ、下取り車の査定がつかないといった現状の課題も克服されていきそうです。

画像: MobiSaviが開発したEV実用性能証明書ファクティブ(FACTIV)の例。BYDジャパンは同社とも共同研究を進める。

MobiSaviが開発したEV実用性能証明書ファクティブ(FACTIV)の例。BYDジャパンは同社とも共同研究を進める。

This article is a sponsored article by
''.