2025年1月8日(日本時間)、米ラスベガスで開幕したCESは、予想通りAI一色の様相を呈していました。スマートホームやSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)など、メガOEMやティア1サプライヤーの展示内容そのものは前年と大きくは変わらなかった印象ですが、2024年より一層AIにフォーカスした印象です。自動車においては、大規模言語モデル(LLM)と生成AIによるIVI(イン・ヴィークル・インフォテイメント)と自動運転(AV=Autonomous Vehicle)への流れが加速し、これから実装されていく技術がより明確になってきました。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの基調講演では、AVとヒューマノイドが当たり前になる未来が提示され、自動運転車の実現性への期待が高まりました。フアン氏の講演とADASの老舗であるモービルアイやロボタクシーのトップランナー ウェイモの展示などから、AVの現在地について読み解いてみます。(前編・後編にわけて掲載します。本記事は後編)

ロボタクシーとパーソナルカーのADASが融合する日はまだ遠い?

ホンダはコストも考慮してか、ゼロシリーズのSoCのパートナーとしてルネサスエレクトロニクスを選び、ADASシステムは米スタートアップのhelm.aiと協力します。NVIDIAのGPUはハイスペックではあるものの、その性能の一部しかADASでは使われないし、消費電力も抑えたいということが背景にあります。モービルアイは、EyeQ6などのSoCのコアコンピューターの性能はそこそこに、学習内容によって異なる性能のアクセラレーターを組み合わせて最適化を図っています。

画像: ホンダは2026年にオハイオの工場で生産を開始する「ゼロシリーズ」において、SoCではルネサスエレクトロニクスと、ADASでは米helm.aiと協力すると発表した。

ホンダは2026年にオハイオの工場で生産を開始する「ゼロシリーズ」において、SoCではルネサスエレクトロニクスと、ADASでは米helm.aiと協力すると発表した。

また、BMWも2025年に登場する新世代EVのノイエ・クラッセは、クアルコムの「スナップドラゴン ライドフレックス」を採用していますし、ソニー・ホンダのアフィーラも同様です。AVにおいても、NVIDIAが覇権を握るのか。モービルアイやクアルコム、さらには日本のティアフォーやチューリングのような中小のスタートアップにもAVビジネスのチャンスがあるのか。

また、トランプ次期政権下で中国の自動車メーカーに米国製の高性能半導体を販売し続けることができるのか。ジェンスン・フアン氏のAV時代到来宣言の一方で、ロボタクシーとパーソナルカーのADASが融合するXデーはまだ見えず、再び沸き立ち始めたAV開発から当分は目が離せそうにありません。(了)

●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。

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