2025年1月8日(日本時間)、米ラスベガスで開幕したCESは、予想通りAI一色の様相を呈していました。スマートホームやSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)など、メガOEMやティア1サプライヤーの展示内容そのものは前年と大きくは変わらなかった印象ですが、2024年より一層AIにフォーカスした印象です。自動車においては、大規模言語モデル(LLM)と生成AIによるIVI(イン・ヴィークル・インフォテイメント)と自動運転(AV=Autonomous Vehicle)への流れが加速し、これから実装されていく技術がより明確になってきました。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの基調講演では、AVとヒューマノイドが当たり前になる未来が提示され、自動運転車の実現性への期待が高まりました。フアン氏の講演とADASの老舗であるモービルアイやロボタクシーのトップランナー ウェイモの展示などから、AVの現在地について読み解いてみます。(前編・後編にわけて掲載します。本記事は後編)

ウェイモも運行地域の拡大フェーズに突入

さて、もう1つの自動運転の雄であるウェイモは、長年アリゾナ州フェニックス市のみで、石橋を叩いて渡るようなAVの実装を行なってきました。

2009年にGoogleから独立して15年になりますが、2021年にサンフランシスコに進出し、クルーズ撤退のあとは、同市のほぼ全域でドライバーレスのロボットタクシー(課金あり)を拡大、2024年は第3番目の都市としてロサンゼルスにも進出し、現在全米で700台のAVを運行しています。1週間に15万回のライドを提供し、2024年は総計400万マイルを走行して前年の5倍以上の実績となりました。

2025年はアトランタとテキサス州オースチンでウーバー(Uber)と組んで運行サービスを開始するほか、マイアミにも進出します。2020年から使用してきたジャガー iペイスをフェーズアウトしつつ、ジーカーが専用設計したシャトルとヒュンデ アイオニック5がフリートとして導入される予定で、これらの車両はCESのウェイモブースで展示されていました。

画像: ウェイモは、世界で1年間に140万人の命が交通事故で失われる現実を変えるべく、「もっとも信頼できるドライバー」を目指す。写真は第6世代のWaymo DriveでZeekrのシャトルに続いて導入するヒュンデ アイオニック5。

ウェイモは、世界で1年間に140万人の命が交通事故で失われる現実を変えるべく、「もっとも信頼できるドライバー」を目指す。写真は第6世代のWaymo DriveでZeekrのシャトルに続いて導入するヒュンデ アイオニック5。

ウェイモのヴィジョン「世界で最も安全なライドヘイリングのエコシステムを提供する」ことは創業以来変わらず、親会社のグーグルは2024年夏に50億ドルを追加投資すると発表しています。一方で、累計で1兆円以上をクルーズに投資したGMが、2023年秋のサンフランシスコでの人身事故による運行停止命令を受けて、ホンダと共同開発していたロボタクシーシャトル「オリジン」の生産を中止、さらには2024年末にはクルーズそのものを整理解散する決定を下したのとは対照的です。

GMの決定の背景には、ロボタクシー会社が事業を成功させるために、今のウーバー以下の料金でライドサービスを提供する必要があるため、車両供給する側も低価格で販売せざるを得ず、ライドサービス会社も車両メーカーも大きな利益は見込めないとの計算があったと思われます。

ウェイモは、日本交通と提携して東京にも2025年に進出しますが、タクシー会社にAV用ハードウェアとソフトウェア付き車両を提供することで果たしてこれまでの投資に見合った十分な利益を得ることができるのかは不明です。ライダー4個を含む今のセンサーセットの価格はまだ高価なはずですし、世界の主要都市で誰よりも早くサービスを提供することに事業化の成否がかかっているのでしょう。

これまで慎重だったウェイモの運行都市の拡大が急ピッチなのは、テスラがサイバーキャブを発表したことも影響しているはずです。

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