2024年11月21日、ホンダは「夢の次世代電池」とも呼ばれる車載用全固体電池の量産化に向けたパイロットラインを公開した。国内自動車メーカーでは、日産自動車に次ぐお披露目となる。車載用の全固体電池は、トヨタを筆頭に日本勢が圧倒的な優位にあると言われているが、世界的な開発競争の激化により、あと数年で量産車への搭載が始まるという予測も現実味を帯びてきた。(タイトル写真はホンダが全固体電池を初搭載するとみられるスーパースポーツカーのコンセプトカー)

日本発、夢の次世代電池。日産に続きホンダもパイロットラインを公開

日本の自動車メーカーで全固体電池の開発を進めていることを表明しているのは、トヨタ、日産そしてホンダの3社だ。もちろん水面下では他メーカーも基礎研究は進めており、それがゆえに車載用全固体電池技術は日本が独走していると言われている。

トヨタは出光興産とタッグを組み、2024年10月にはその材料となる固体電解質を製造するパイロットラインの基本設計を開始したことを発表。量産化に向けてまたひとつ駒を進めた。完成すれば世界でも有数の規模となり、2027年から2028年には市販車への搭載を開始する計画だ。

画像: 車載用全固体電池のトップランナーと言われるトヨタ×出光興産。パイロットラインはまだ設計段階だがすでに相当高いレベルにあると予想される。(写真は2023年9月に公開された貞宝工場内の開発ライン)

車載用全固体電池のトップランナーと言われるトヨタ×出光興産。パイロットラインはまだ設計段階だがすでに相当高いレベルにあると予想される。(写真は2023年9月に公開された貞宝工場内の開発ライン)

一方、パイロットラインの建設にいち早く着手していたのが日産だ。2022年4月には開発用試作ラインを公開、さらに2024年4月には横浜工場内に建設中のパイロット生産ラインも公開した。こちらは2025年3月までに稼働させる。市販車への搭載は2028年度内に実現する見込みだ。

画像: 神奈川県・横須賀市にある横浜工場内で建設が進むパイロットライン。2025年3月に稼働開始予定。

神奈川県・横須賀市にある横浜工場内で建設が進むパイロットライン。2025年3月に稼働開始予定。

そして去る2024年11月21日、満を持してホンダも自社のパイロットラインの全容を公開した。栃木県さくら市の本田技術研究所の敷地内に建設されたこの実証施設は、敷地面積が約1万2000平方メートル、延床面積はおよそ2万7400平方メートルという広大なもの。量産に必要な各工程を再現しており、技術や量産コストなどの検証を行いながら、並行してバッテリーセルの基本仕様を開発・決定していく。2020年代後半に投入する電動モデルへの搭載を目指すと発表された。

画像: 2025年1月からいよいよ稼働を開始するホンダのパイロットライン。本格量産開始に向け、さまざまな検証が開始される。

2025年1月からいよいよ稼働を開始するホンダのパイロットライン。本格量産開始に向け、さまざまな検証が開始される。

トヨタ、日産ともに初めて全固体電池を搭載する車種は(コンセプトカーを除いて)現時点で明らかしていない。ホンダも公式なインフォメーションはないものの、今夏開催されたモントレー・カー・ウィークで上級幹部が「2027年もしくは2028年新しいフルエレクトリックのスポーツカーを発売する」とコメントしている。2023年の同イベントで映像が公開された「Performance Electric Vision Design Study」に基づくスーパースポーツカーの開発が進んでいることは間違いなく、タイミング的にもこれがホンダ初の全固体電池登載車であることは間違いないだろう。

画像: 2023年8月に開催されたモントレー・カー・ウィークで初公開されたアキュラの「エレクトリック・ビジョン・デザイン・スタディ」。これがホンダ初の全固体電池搭載車になりそうだ。

2023年8月に開催されたモントレー・カー・ウィークで初公開されたアキュラの「エレクトリック・ビジョン・デザイン・スタディ」。これがホンダ初の全固体電池搭載車になりそうだ。

日本勢が実際に全固体電池搭載車を発売するのは、早くとも2027年になる見込みだ。現状では、トヨタが先行し間髪入れずにホンダからも発売される。いずれも当初は少量生産の高価格車から搭載が始まると思われるが、2030年前後には量産効果もあって普及価格帯にまで急拡大するだろう。

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