2024年10月7日、日産自動車は、ホンダ/BMW/フォードが北米で2023年9月から展開するV1G/V2G充電ネットワーク会社「チャージスケープ(ChargeScape)」に参加すると発表した。チャージスケープは、電力会社とEVオーナーが直接電力のやりとりを行うソフトウェアを開発し、本年9月18日よりアメリカとカナダの一部地域で運用を開始している。続いて、10月11日には日産独自の取り組みとして、英国で2026年より「V2G」事業を開始することを発表。このところライバル各社に押され気味の感があったEVのパイオニアが、いよいよ巻き返しに出ようとしている。(タイトル写真は英国で展開する「V2G」のイメージ)

充電コストを低減するチャージスケープのソフトウェア

チャージスケープが提供するソフトウェアを搭載したEV/PHEVは、家庭に設置したEV充電器の種類(スマート充電器か否か)を問わず、電力会社ネットワークにアクセスすることが可能になる。最適な充電スケジュール管理や、電気代が安いオフピーク時間帯での充電などによって電気代の削減が可能となる。

現状、EV側からの放電はできないので「V1G」のレベルだが、すでに採用されている車載テレマティクス技術を活用する仕組みなので、導入のハードルは低い。近い将来はEV/PHEVユーザー側からも電力会社に電力供給(双方向充放電)が可能となり、いわゆる「V2G」を実現する計画だという。

画像: 「チャージスケープ」のソフトウェアを追加するだけで充電効率アップ、電気代を抑えることができる。

「チャージスケープ」のソフトウェアを追加するだけで充電効率アップ、電気代を抑えることができる。

●ユーザー側のメリット
電力需要が高い時間帯には充電を一時停止するなど、効率的な充電サービスを利用できる。結果、電気代を抑えることが可能になりEV/PHEVのランニングコストが低減できる。将来は車両に蓄えた電気を電力会社に売り戻し(キャッシュバックなど)も可能になる。

●電力会社側のメリット
複数ブランド(ホンダ、BMW、フォード、日産)のEV/PHEVを分散型電源として活用することが可能になり、家庭で消費される電力と地域で消費される系統電力のバランスを最適化できる。同時に、再生可能エネルギー由来電力の活用も最大化できる。

日本とは電力供給事情が異なるので単純な比較はできないが、需要過多などでたびたび短時間の停電が発生する北米においては、EV/PHEVの増加に備えた有効なソリューションであることは確か。EV/PHEVの充電では、とかく急速充電インフラに話題が集中しがちだが、基本は自宅充電である。導入コストを抑えて充電管理を効率アップ、地域の電力安定化にも貢献できる。この新サービスが、北米やカナダを走る日産EVでも利用可能となるのだ。

イギリスでは2026年から独自開発のV2Gサービスを提供開始

さらに日産は、10月11日に英国で独自の「V2G」事業を開始することも発表している。自動車メーカーとして初めて交流電源(AC)システムによるグリッド認証コード「G99」を取得し、2026年から英国内のAC系統電源への電力供給を可能とする。

画像: 車両側で直流電気を交流電気に変換する機能を搭載。高価なパワーコンディショナーやスマート充電器を利用せずに、直接家庭で利用したり系統電源に放電して売電することができる。

車両側で直流電気を交流電気に変換する機能を搭載。高価なパワーコンディショナーやスマート充電器を利用せずに、直接家庭で利用したり系統電源に放電して売電することができる。

こちらは車載充電器側に本格的な“V2G機能(専用インバータ)”を組み込むことで、パワーコンディショナーを介さず家庭のコンセントや系統電源に直接接続できるようになる。本格的な「V2G対応」だけに、当面の対応車種は限定されるようだが、今後発売される新型「マイクラ」、「リーフ後継車」から標準採用される可能性が高い。この双方向充放電機能を搭載したEVは、今後英国以外の国や地域でも販売を拡大していく予定だという。

さらにパワーコンディショナーを内蔵した双方向充電器も新たに開発していることも発表された。現在、各国・地域で普及している単方向充電器と同等の使い勝手、同等の価格で販売することを検討している。これが実現すれば、V2G機能を搭載していないEV/PHEVでも、そのままAC系統電源への給電が可能になる。

EV普及は踊り場にあると言われるものの、動力性能や航続距離を競った時代から、今後はサービスを競い合う時代へと変化していく。いち早く手を打った日産の新たな充電サービスをぜひ日本でも体験してみたい。

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