先月の北京モーターショーで姿を見かけなかった欧州ブランドに仏プジョーとシトロエンがあります。2015年には両ブランド合わせて中国で年70万台を販売していましたが、昨年は8万台まで落ち込み、ステランティス社は1992年以来の東風汽車との合弁会社である神龍汽車の資産を東風に売却しました。また、チェロキーやコンパスなどを生産し人気を誇ったジープブランドも販売低迷で広州汽車との合弁会社を2022年に清算し、現地生産から撤退しています。中国撤退のシナリオも濃厚かと思われた中、ステランティスは新興NEV(新エネルギー車)メーカーであるリープモーター(零跑汽車)との提携に踏み切りました。果たしてどういう戦略を描いているのでしょうか。(タイトル写真はリープモーターの世界戦略車「C10」)

中国市場をまだ見限っているわけではない

プジョー・シトロエンの販売の激減ぶりは、2015年に160万台を販売していた現代・KIAグループが昨年は42万台にまで沈んだことと合わせて、中国市場の近年の激変ぶりを物語っています。しかし、ステランティスも中国市場をまだ見限っているわけではありません。昨年4月の上海モーターショーでは、プジョーはプラグインHEVの新型プジョー408(中国では408X)とコンセプトカー「インセプション」を、シトロエンは車台(スケート)とその上のキャビン部分(ポッド)が載せ替え可能なユニークな自動運転モビリティーを提案しています。しかしながら、中国でのNEV車の展開が遅れてフリーフォールした流れを反転させることは、今年の北京モーターショーの中国ブランドの勢いを見る限り容易ではなさそうです。

画像: 昨年の上海ショーでプジョーの未来コンセプトカー「インセプション」を発表するプジョーブランドCEOのリンダ・ジャクソン氏。(写真:ステランティス)

昨年の上海ショーでプジョーの未来コンセプトカー「インセプション」を発表するプジョーブランドCEOのリンダ・ジャクソン氏。(写真:ステランティス)

チャイナはチャイナを持って制す?

こうした中、かねてより中国製EVの脅威に警鐘を鳴らしていたステランティスのカルロス・タバレスCEOは、昨年10月にリープモーターに15億ユーロを出資、約21%の株式を取得して業界を驚かせました。今月14日には、同社の製品を中国以外で独占的に製造・販売するJ/Vをオランダに設立し、今年秋から欧州のステランティスの販売店を通じてシティーカー「T03」と新開発の中型SUV「C10」の販売を開始すると発表しました。

このJV会社は、ステランティスが51%の株式を持って主導権を握り、欧州9カ国200カ所の「ステランティス&ユー」のマルチブランドショールームでリープモーター車を販売し、2026年までに500店舗まで拡大する計画です。またロイターの報道によれば、ステランティスは「フィアット500」などを生産しているポーランドのティヒ(Tychy)工場でリープモーターモデルを生産し、欧州市場に雪崩を打って上陸しているMGやBYD、長城汽車やチェリー(奇瑞汽車)などに欧州内生産においても対抗することになります。

ステランティスは、中国市場ではプジョー・シトロエンの挽回に巨額の投資をするのではなく、提携先の東風汽車にある程度手綱を渡しながら、リープモーターの主要株主として、グローバルに同社の製造や販売を支援します。薄利の中国市場の泥沼に足を取られることは避けつつ、欧州でのEVの普及を見据えて2万ユーロ以下の製品群の補強と、今後市場拡大が期待されるインドや中近東・アフリカ、南米において、コスト競争力の高いリープモーター製品をあてがっていく戦略です。タバレス氏は、「好む好まざるに関わらず、中国車は欧州でのシェアを拡大していく。その勢いを利用するつもりだ」と発言しています。

画像: 昨年10月の提携調印式と同様に杭州に赴いたカルロス・タバレス氏(左)とリープモーターの創業者で会長CEOの朱江明氏。(写真:ステランティス)

昨年10月の提携調印式と同様に杭州に赴いたカルロス・タバレス氏(左)とリープモーターの創業者で会長CEOの朱江明氏。(写真:ステランティス)

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