フォルスクスワーゲングループ(Volkswagen AG)が2024年3月13日に発表した2023年の決算では、販売台数(936万台)と売上高(3,223億ユーロ)は前年比2桁の増加でしたが、営業利益(226億ユーロ)は前年と同等で利益率(7.0%)は1%減少しました。2024年には合計30車種を導入予定で売上高は+5%を見込んでいますが、利益率は横ばいの予想です。トヨタの営業利益が2024年3月期に+80%増加し、ヒュンダイ・キアやステランティスがいずれも2桁の増益であるのに比べると見劣りのする内容で、これを受けて株価は5%以上下落しました。売上高の13%を超える高いレベルの投資(研究開発費+設備投資)が続き、コストも高いのが原因です。今年は昨年のような大量の受注残もないため、「パフォーマンスプログラム」と呼ぶコスト削減の達成(目標100億ユーロ)が重要になります。(写真:フォルクスワーゲン)

ポルシェの存在感が増す

ポルシェは昨年32万台を販売し、売上高400億ユーロ、営業利益69億ユーロとプログレッシブグループ(62億ユーロ)を上回る利益を上げています。平均販売単価は11万7000ユーロ(1872万円※1)で営業利益率は18.6%と、近年の収益力の向上も顕著です。今年は、パンナメーラと911を改良、EVのタイカンがフルモデルチェンジし、全面改良のマカンにはEVが加わり新型車ラッシュとなります。3月12日の決算会見後、株価も78ユーロから90ユーロへと上昇し、市場は好感を示した形です。※1:1ユーロ=160円で計算

画像: 2022年9月にVWグループCEOに就任したオリバー・ブルーメ氏。ポルシェのCEOも兼務している。

2022年9月にVWグループCEOに就任したオリバー・ブルーメ氏。ポルシェのCEOも兼務している。

VWの時価総額は624億ユーロ(※2)で、一時は2022年に株式上場した子会社(75%を保有)のポルシェを下回っていました。現在もメルセデス・ベンツやBMWより評価額は低く、最近ではステランティスにも抜かれています。かつて世界販売台数1位を争ったトヨタと比べてもその収益力の差は明らかです。※2:3月15日現在

【VWとトヨタの2023年度の業績】(トヨタは2024年3月期予想)
項目    VW    トヨタ
世界販売  936万台 1,040万台
売上高   49.6兆円  43.5兆円
営業利益  3.5兆円  4.9兆円
営業利益率  7.1%  11.3%
投資額   5.6兆円  3.2兆円
時価総額 10.0兆円  47.1兆円
※為替レートはトヨタの今期レート(1ユーロ=154円)で計算

EV化の目標は修正せず

昨年の新車販売におけるEVの比率は、VWグループが8.3%、ポルシェが10%でしたが、両社ともに2030年にそれぞれEV5割と8割という目標は修正しませんでした。質疑応答では、EU内にあるとされる2035年のエンジン車禁止を見直す動きについても、ブリューメCEOは「eモビリティが未来だ」と繰り返し強調し、「少し向かい風が吹いているからといって、すぐに政治的な決定を変更するのはおかしい。議会や行政府、自動車メーカーが協力してCO2削減目標の達成に取り組むべきだ」と述べました。翌日行われたVWブランドグループコアの年次記者会見でも、トーマス・シェーファーCEOは、「ゲームの途中でルールは変えないものだ」とコメントしました。

ただし一方で、ブルーメ氏は、中国に比べて整備が遅れている欧州の充電インフラは「大規模な増強」が必要だと述べ、(EV販売の環境が整わないのに)メーカーが理不尽な額のCO2排出規制の罰金を払うことがないように(過渡的な)目標の調整も必要だという考えも示しました。また、地域ごとのEVシフトのスピードの違いを考慮し、EV、PHEV、エンジン車の選択肢を用意して転換期における市場ニーズに対応するとしており、この辺りはメルセデスベンツと同様に「EV一本槍」の戦略を修正しているといえるでしょう。

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