自動車産業の「100年に一度の変革」を促すEVの鍵を握るのはバッテリーの性能でありコストですが、その価格は現状リチウムなどの電池材料の高騰などで下げ止まっています。希少鉱物のリサイクリングの取り組みと並行して注目されているのがEVバッテリーの二次利用ですが、現状は思ったように進んでいないようです。最近のロイターの報道を見ながら、その理由を探ってみたいと思います。(タイトル写真:日産自動車)

蓄電池導入量は2030年に現在の10倍に

日本政府もEVバッテリーの製造能力や定置型蓄電池の普及をGX戦略の重要課題としており、「第6次エネルギー基本計画(2021年度)」において、2030年にEVバッテリー国内生産能力を100GWh(2022年度の「蓄電池産業戦略」で150GWhに引上げ)、蓄電池の国内累積設置量を2021年の6GWhから24GWhに引き上げる目標を立てています(出典:「定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査」報告書 三菱総研作成のMETIへの報告書)。

世界的にも、2030年までの定置型蓄電池の導入量は、保守的なシナリオでも2021年の10倍の270GWh、2050年には1.3TWh(2050年「世界ネットゼロ」のシナリオではその3倍)と飛躍的に増えると予想されており(前掲報告書のP.92参照)、特に米国や中国では、再生エネルギー発電とセットで蓄電池が設置される電力系統用が加速度的に増加すると予想されています。

画像: 伊藤忠商事は中国でEV用電池のリユース・リサイクル事業を手掛けるShenzhen Pandpower社と提携、そのノウハウを基に2021年に蓄電システム“Bluestorage”の初号機を山口県のパートナー会社工場にて稼働開始した。(写真:伊藤忠商事)

伊藤忠商事は中国でEV用電池のリユース・リサイクル事業を手掛けるShenzhen Pandpower社と提携、そのノウハウを基に2021年に蓄電システム“Bluestorage”の初号機を山口県のパートナー会社工場にて稼働開始した。(写真:伊藤忠商事)

EVバッテリーの再利用は、EVそのもの価値の向上に加え、希少鉱物のリサイクルや新品電池の生産によるCO2の排出量を減らすことにも繋がります。LCAでのCO2削減や、サーキュラーエコノミーの観点からも、今後、家庭用・業務用・電力系統用の蓄電池の需要の拡大に合わせて、EVバッテリーの二次利用のビジネスが加速するのは間違いなさそうです。(了)

●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。

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