自動車産業の「100年に一度の変革」を促すEVの鍵を握るのはバッテリーの性能でありコストですが、その価格は現状リチウムなどの電池材料の高騰などで下げ止まっています。希少鉱物のリサイクリングの取り組みと並行して注目されているのがEVバッテリーの二次利用ですが、現状は思ったように進んでいないようです。最近のロイターの報道を見ながら、その理由を探ってみたいと思います。(タイトル写真:日産自動車)

テスラはマイナー事故でもスクラップ?

もう一つ、これもロイターが別の記事で報じたものですが、EVの事故車のバッテリーの回収が進まず、多くが廃棄されているという現実です。欧米の廃車オークションでは、EVトップメーカーとして躍進するテスラの事故車のほとんどが1万マイル未満の低走行車で、わずかなダメージを受けたバッテリーでも、診断して再利用する術がないため、ほとんどがスクラップされているというのです。

さらに、テスラの「モデルY」から採用され始めた「セル・トゥ・ボディ」といわれるデザインは、バッテリーセルをモジュール化せずにそのまま鋼板に挟んで接着材で固定する方式をとっており、そのため修理が難しく軽微な事故でも全損扱いせざるをえないと保険会社は指摘しています。

画像: テスラのバッテリーはモジュールをなくしただけでなく、バッテリーパックという概念も超えて直接ボディの骨格とするため、「修理性はゼロ」との声も(写真はCleanTechnica記事より引用)。

テスラのバッテリーはモジュールをなくしただけでなく、バッテリーパックという概念も超えて直接ボディの骨格とするため、「修理性はゼロ」との声も(写真はCleanTechnica記事より引用)。

バッテリーの使用時のデータ、診断や修理の方法などがテスラの指定業者に独占されており、一般のサービス工場では修理できないとアメリカでは訴訟にもなっています。テスラを含めEVを生産する大手自動車メーカーは、バッテリーの補修性を改善しているとしていますが、車体構造と一体化したバッテリーパックの損傷にどう対応するかが、EVの大きな課題の一つであることは間違いありません。

欧米では二次利用の試みが拡大

EVバッテリーのライフサイクルでの追跡を可能とするため「バッテリーパスポート」を導入しようとしているEUでは、EVを生産する自動車メーカーも独自に二次利用のプロジェクトを進めています。

ダイムラートラックは、乗用EVバス「eCitaro」を生産販売していますが、「GMW+」というドイツ政府後援のプロジェクトで、2021年にハノーバー市の交通ステーションにEVバスの使用済みの蓄電池ユニットを提供し、市内電車やEVバスの電源として活用しています。

画像: ダイムラートラックのEVバス「eCitaro」のバッテリーは、ハノーバー市のトラムの給電ステーション用蓄電池として再利用されている。(写真:ダイムラートラック)

ダイムラートラックのEVバス「eCitaro」のバッテリーは、ハノーバー市のトラムの給電ステーション用蓄電池として再利用されている。(写真:ダイムラートラック)

また、Audiも「e-tron」の開発車両の使用済み電池を、ドイツのニュールンベルグ、ベルリン、スイスのチューリヒ、オーストリアのザルツブルグなどから設置を開始している「チャージングハブ」の蓄電池として使用しているほか、インドでは「e-リキシャ(三輪タクシー)」用として再利用を始めました。

画像: アウディがインド・バンガロールに拠点を置く非営利スタートアップ企業Nunamと共同で開発した「eリキシャ」。e-tronの開発車両のバッテリーが再利用される。(写真:アウディ)

アウディがインド・バンガロールに拠点を置く非営利スタートアップ企業Nunamと共同で開発した「eリキシャ」。e-tronの開発車両のバッテリーが再利用される。(写真:アウディ)

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