クラシックカーのEVコンバート企業も続々と
さらに、アメリカだけで500万台あるというクラシックカーをEVとしての再生させるビジネスが欧米では増えているようです。そうした企業には、1960年台のポルシェ「911」やアストンマーティン「DB6」を数千万円から1億円以上のEVに仕立てる英国のLUNAZのような会社から、近い将来、古いディーゼル車の走行が禁止されるフランスでは、Fiat500やルノークリオ3を5,000ユーロ(75万円)程度でコンバートするビジネスまであります。コストを抑えるために、後者には二次利用のバッテリーが搭載されても不思議はありません。
二次利用の主要マーケットは系統電力グリッド
ロイターによれば、世界中で50社以上のバッテリーの二次利用のスタートアップ企業があり、「サーキュラーエコノミー」を支持する投資家から10億ドル以上の資金が注ぎ込まれていますが、それら企業の多くが目指すのが、自然エネルギー発電とセットで電力グリッドに接続する大容量蓄電池です。
ロンドンに本社を置くZenobe(ゼノべ)は、EVバスを運行する会社にバッテリーと充電インフラを提供すると同時に、使用後はそのバッテリーを100〜120kWhの定置型蓄電池ユニットに仕立てています。同社は現在、英国、オーストラリア、ニュージランドで1,000台のEVバスに435MWhのバッテリーを保有していますが、もし英国の4万台のバスが全てEVになれば、その電池の総容量は16GWhとなり、英国のピーク電力需要の3分の1に相当するとのこと。
またZenobeは、英リバプール市近郊のケーペンハーストで、系統電力接続としては欧州最大となる100MWh蓄電池システムを設置して電力グリッドの無効電力(reactive power)として提供しています。近郊の石炭火力発電所による電圧を安定させるための調整発電を不要にすることで、向こう15年間で100万トン以上のCO2排出を削減できるそうです。
また、米カリフォルニア州のバッテリー二次利用のスタートアップであるスマートヴィル(Smartville)は、テスラの事故車からもバッテリーを調達し、定置用蓄電池を生産、販売しています。同社は米エネルギー省などの資金も得て200〜500kWhの蓄電池ユニットを開発しており、SOH(State of Healthー健全度、劣化度)が異なるバッテリーモジュールを混在させても有効に管理できるBMS(バッテリーマネジメントシステム)を開発したことに特徴があります。同社は2026年には米国の廃棄バッテリーの量は年間1GWh(EVにして約2万台分)に上ると予測しており、2024年以降はGWh単位のユニットを電源に接続することを計画しています。