日本発のEVとして2023年初頭に大きな話題となった、ソニー・ホンダモビリティ(SHM) の「AFEELA(アフィーラ)」。発表から半年が経ち、今のところ表立った動きは見えてこないが、2025年の発売を目指して計画は粛々と進んでいるはずだ。そのアフィーラが誕生するまでにはどんな考えがあったのか。発表直後にアフィーラで目指す新たなモビリティ像について、SHMの川西泉社長兼COOに伺った話を改めて振り返ってみた。

「移動しないときのクルマの価値をどう考えるか」

Q:今やまったく我々が想像もしたことがないようなコンテンツに期待が高まっています。以前ならTikTokのようなショートムービーが流行るなんて考えもしなかった。クルマとITが融合したことで「この手があったのか」をぜひ創造して欲しいです。

川西:決定的に今の立場で言えることは、長距離で出掛ける時は別として、日本ではクルマに乗っている時間はあまり長くないということです。なので基本的にクルマで2時間の映画なんか見ない。そうなるとモビリティに合わせた短時間のコンテンツが必要になる。そこは時間と空間をどう作り上げていくかにつながってきて、モビリティを使っている間のコンテンツとして別のものができるかもしれません。

Q:つまり、一発芸が妙にバズったりする可能性もあると?

川西:そういう可能性をコンテンツに仕込んでいくことが大事です。既存のエンタテイメントもあるが、新しいものを創出していくということはモビリティに対する新たな可能性、チャレンジになっていくと思っています。当たるかどうかもわからないし、外れるかもしれない。ソニーはそのチャレンジを認める会社なので、それをやっていくのはとても大事だと思っています。

Q:SHMがEVに参入することで、移動そのものの付加価値が変わっってくるということでしょうか?

川西:クルマは乗っていない時の時間が長い。その状態のクルマをどう活かすのかというのも課題の一つです。これはエンタテイメントと違うところがあるので、そこはエネルギー的な観点も含めてホンダの知見も取り入れていこうかと思っています。もう一つ、移動しない時のクルマの価値というのはどう考えるかです。たとえばアメリカはガスがないので、基本はオール電化の家が多いんですね。庭にクルマが停まっていて、コンセントからの充電状態だともう一つの部屋とも捉えられてもいいと思うんです。

Q:なるほど、つまりEVなら充電の時に価値が生まれるというわけですね?

川西:安全性を担保した上での話ですが、ADAS(先進運転支援システム)も一つのエンタテインメントになるんじゃないかと思っています。クルマの挙動をディスプレイに映し出してそれを楽しめる情報とする。それを踏まえれば、必ずしもオーソドックスなエンタテインメントだけを考えなくてもいいのではないかと思っています。そうなればADASはもっと面白くもできるかもしれない。それが意外な見せ所になるのかもしれません。

「新しいコンテンツの提案はソニー側の役目」

Q:クアルコムとの提携はこのエンタテイメントにどう活かされるのでしょうか?

川西:クアルコムの「SnapDragon DigitalChassis」の採用については、あくまでソリューションとして提案されたということです。とはいえ、提供されているSoCを中心に自分たちのモビリティを投入していくことは事実なので、それをベースにしながら作り上げていくことにはなります。新しいモビリティとしての楽しみ方、エンタテインメントをテクノロジーにとどまらずコンテンツの領域にまで踏み込んだ形をEpic Gamesと一緒に検討していきたいと考えているところです。

画像: プレスカンファレンスにはクアルコムのCEOであるクリスティアーノ・アモン氏がサプライズで登壇した。左はソニーグループ代表執行役 会長 CEOの吉田憲一郎氏。

プレスカンファレンスにはクアルコムのCEOであるクリスティアーノ・アモン氏がサプライズで登壇した。左はソニーグループ代表執行役 会長 CEOの吉田憲一郎氏。

Q:アフィーラでは英文字の書体は発表されていますが、エンブレムに使われるシンボルマークはあるのでしょうか?

川西:明確には答えていませんが、当面はアフィーラのロゴマークがその役割を果たすと思って下さい。エンブレムを付けないのは、「メディアバー」というディスプレイを装着することによって自己表現が可能だということにあります。一般的なエンブレムは固定で付けることになりますが、我々はディスプレイでの表現でそれに対応することで動的に変えられることを考えました。アフィーラの表示をできるようにしたのもそれが理由です。その意味では、アフィーラのロゴマークがエンブレムということになるのかもしれません。

Q:パートナーとして組んだホンダに対してどんな期待をしていますか?

川西:ホンダにコンテンツとしての期待はしていません。本業ではありませんから。ホンダに期待するのはクルマとしての完成度だったり、安全性だったり、そういうところに対するアセットを十分お持ちだという理解で今回の合弁に至っています。合弁によって何らかの新たなものができるかもしれませんが、新しいエンタテインメントを考えていくのはソニー側の役割だと思っています。

画像: ソニー・ホンダモビリティの川西 泉 代表取締役社長 兼 COO。1986年ソニー入社。プレイステーションの商品開発やaiboの開発責任者を歴任。2022年9月より現職。

ソニー・ホンダモビリティの川西 泉 代表取締役社長 兼 COO。1986年ソニー入社。プレイステーションの商品開発やaiboの開発責任者を歴任。2022年9月より現職。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ソニーは2020年1月、米国ラスベガスで開催されたCES2020において、EVプロトタイプ「VISION-S」を発表して世間を驚かせた。その姿はすぐにでも市販されるのではないかという高い完成度を持っていたからだ。当初、ソニーとしては自社で開発したパーツのテスト用として開発したはずだったが、この高い完成度により市販化を期待する声が一気に高まった。それがこのソニー・ホンダモビリティ設立、「AFEELA」の登場にもつながったのだ。

そして、2025年には北米でその第一号が発売され、その年の後半には日本での展開も決まった。果たしてソニー・ホンダモビリティはどんな姿を我々の前にみせてくれるのだろうか。ソニーとホンダが手掛けるEV専業メーカーに動向には引き続き大いに期待したいところだ。

●著者プロフィール
会田 肇(あいだ はじめ)1956年、茨城県生まれ。大学卒業後、自動車雑誌編集者を経てフリーとなる。自動車系メディアからモノ系メディアを中心にカーナビやドライブレコーダーなどを取材・執筆する一方で、先進運転支援システム(ADAS)などITS関連にも積極的に取材活動を展開。モーターショーやITS世界会議などイベント取材では海外にまで足を伸ばす。日本自動車ジャーナリスト協会会員。デジタルカメラグランプリ審査員。

This article is a sponsored article by
''.