EV専業メーカーとして快走を続けるテスラが、5月18日に株主総会を開催しました。そこで明らかになったことと、3月1日の「インベスターデー」での発表内容を合わせて紹介します。テスラが描く壮大なビジョンには改めて驚きを感じざるを得ないでしょう。(タイトル写真はYouTubeで配信された株主総会の模様)

サイバートラックは今年中に生産・納車開始

2019年に発表され、当初は2021年にも生産開始とされていた「サイバートラック(Cybertruck)」は、インベスターデーと株主総会の会場ともなったテキサス州オースチンの工場で今年中に生産が始まります。

サイバートラックの最終プロトタイプが、インベスターデーの会場に展示されていましたが、ステンレススチールの外板そのものを骨格とする「エクソスケルトン(Exoskeleton)」構造を持ち、プレスをせず、パネルを曲げることで成形し塗装も施さないユニークなデザインのモデルです。

画像: 150万件の予約があるとされるサイバートラックについてマスクCEOは「年間25万台(もしかしたら50万台?)、需要があるだけ生産すると述べた。

150万件の予約があるとされるサイバートラックについてマスクCEOは「年間25万台(もしかしたら50万台?)、需要があるだけ生産すると述べた。

「製造がデザインを決める(manufacturing dictates design)」と設計担当者が言うように、テスラにおいては、最終的な製造の完全自動化(Automation)を視野に入れ、製造工程で如何に省力化し、コストを下げるかに最大の力点が置かれているようです。「デザイン→車両設計→製造設計→生産」という段階的工程をできるだけ同期エンジニアリング(Simultaneous engineering)することで、かつて日本の自動車メーカーはコストや品質の優位を確立しましたが、テスラは完全自動化を常に意識し、製造工程を核にデザイン、設計、製造の各部門が一体となった組織で車を開発しています。

画像: クルマの設計・生産システムを根本から変えるテスラ。技術革新のスピードとスケールはまさに破壊的(disruptive)だ。

クルマの設計・生産システムを根本から変えるテスラ。技術革新のスピードとスケールはまさに破壊的(disruptive)だ。

完全自動運転のAIをテスラボットにも応用

マスクCEOは、2021年のA1デーでお披露目したテスラボット「オプティマス(Optimus)」の最新型の映像を見せながら、「人間がやりたくない作業(退屈、重労働、危険)を代わって行うヒューマノイドは一人に一台あってもおかしくないし、100億台の市場かもしれない」「将来はクルマよりもオプティマスが間違いなくテスラの主な収益源になるだろう」と述べました。

このように、「持続可能なグローバルエネルギー・経済の実現に向け加速する」というミッションを掲げ、自動車事業をエネルギーマネジメント事業の一環として捉えているテスラは、完全自動運転システム(FSD)用に開発しているAIが、テスラボットにもそのまま応用できるとしています。常に後継者の話がついて回るマスクCEOですが、「AIの開発を見届ける必要がある」としてまだまだ続投の姿勢です。次回は、テスラの自動運転のビジョンなどについてもう少し見てみたいと思います。

画像はInvestor day のプレゼンテーション資料(PDF)と株主総会の動画キャプチャなどを使用した。また今回のプレゼンテーションの内容はさらに詳しく「Impact Report 2022」で200ページ以上にわたって説明されている。
Tesla Investor day: https://youtu.be/Hl1zEzVUV7w
2023 Annual Shareholders Meeting: https://youtu.be/bZNL_8bUz6A
2022 Tesla Impact Report: https://www.tesla.com/impact

●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。

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