GMは「シボレー ボルト」を復活
EVシフト減速を早くから察知して軌道修正してきたGMは、アルティウムバッテリーを幅広いブランドに展開(ホンダ「プロローグ」へも提供)したことで、フォードよりEVの損失を抑えています。キャデラックやGMCの高級EVの販売台数は多くはありませんが、2024年後半から販売しているコンパクトSUVのイクイノックスEVは販売台数を伸ばしており、その延長線上に今年再導入されるのがシボレー ボルトです。2010年の導入当初はEREVとして、2016年からはBEVとして一定の人気を維持したボルトの販売は2023年モデルで一旦終了しましたが、GMはこれを時限的措置で復活させます。
新型ボルトは、エクステリアパネルを2023年モデルのままに、モーターをはじめとする駆動系パーツはイクイノックスEVのものを採用し、インテリアは大型ディスプレイで刷新、「ハンズフリー」のADAS「スーパークルーズ」も選べます。バッテリー(LFP)容量は65kWhで航続距離255マイル(408km)を確保、テスラスーパーチャージャー用のNACSポートを備えて急速充電も150kWに対応し、価格は2万8995ドルからと米国で最も安価なEVとなります。クルマの平均購入価格が5万ドルを超え、「アフォーダビリティ(買い易さ)」が課題になっている米国市場で人気を呼ぶかもしれません。

2027年モデルとして再導入のシボレー ボルトの生産は現在の予定では2年間のみ。
GMが小型車からフルサイズピックアップ、SUVにいたる広範なEVラインナップを今後も維持するのか、一部はPHEVに置き換えるのかなどは明らかではありませんが、2028年に投入予定のLMR(マンガンリッチリチウムイオン)電池で大幅コストダウンできるとする同社は財務的手腕にも長けており、今後も市場に柔軟かつ機敏に対応していきそうです(2年前に20ドル台まで低迷した株価は現在80ドルを超え、14ドル前後のフォードと対照的)。
EREVの動向にも注視
EVやPHEVのプログラムを大幅に整理したステランティスで注目されるのは、今年導入される「ラム1500 REV」です。92kWhのバッテリーと3.6L V6エンジン、130kWのジェネレーターを搭載するEREVで、最高出力647馬力で航続距離は690マイル(1104km)に達します。米国ピックアップ市場初のEREVがユーザーからどう評価されるかが注目されます。
EV大国の中国では理想汽車やBYDがEVレンジ200km超のEREVやPHEVをすでに導入していますし、欧州でもEVレンジ100〜150km、総航続距離が1000km以上の新世代PHEVが販売を伸ばしています。ドライバーの年間平均走行距離が2万kmを超え、片道100kmの通勤も珍しくない米国では、航続距離の心配の少ないEREVが有力な選択肢になるでしょうか。フォードも「2030年にはHEV、EREV、BEVを合わせて同社販売ミックスの50%に達する(2025年は17%)」と想定しています。

海外勢でも、2027年に発売のフォルクスワーゲン傘下のスカウト(Scout)EVとEREVの両方を導入する
ラグジュアリー市場ではロールスロイスやフェラーリ、今後はジャガーやベントレーなどがEVを導入しますが、メルセデス・ベンツやポルシェなどのドイツ製高級EV(車両価格7万〜10万ドル台前半)は低迷しており、EVポートフォリオが見直されています。全個体電池をはじめとした革新的なバッテリーが主流になるまで、EVの量販は経済性が視されるコンパクト以下のセグメントで進み、PHEVやEREVはミッドサイズ以上のモデルで主力になっていくかもしれません(了)
●著者プロフィール
丸田靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在を経て、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年ヴイツーソリューション)がある。


