GMも79億ドルのEV損失
汎用性のあるアルティウムバッテリーを開発し、デトロイトのEV専用工場「ファクトリーゼロ」を2021年秋にオープンしたGMは、GMCやハマーなどの高級SUVやキャデラック、シボレーで幅広くEVラインアップを展開してきました。
キャデラックのミッドサイズSUV「リリック」は、欧州や日本でも販売されていますが、販売台数はわずかで米国でも年間2万台にとどまります。一方、3万5000ドルからのシボレー イクイノックスEV(5万台)や同ブレイザーEVは比較的好調であり、GMの2025年のEV販売台数は17万台(前年比+48%)とフォード(8万4000台、同−14%)の倍で、テスラ(59万台)に次ぐEV販売2位となっています。
GMもパートナーのLGエナジーソリューション(以下LGES)と全米3カ所に建設したバッテリー工場のうち、ミシガン州の工場を昨年春にLGESに売却しました。また、デトロイト近郊のオリオン工場で計画していたシルバラードEVの生産をエンジン車に切り替えるなど、2年前からEV投資の修正を行なってきた結果、EV関連の損失(2025年)はフォードに比べれば軽度な79億ドルで、2025年は大幅減益ながら27億ドルの税引き前利益を確保しました。

キャデラックは中型SUVのオプティックから40万ドル超の超高級セダンのセレスティックまで5車種のEVを販売する(写真はリリック)
近年米国販売の落ち込みの顕著だったステランティスは2月初旬、主にEV事業清算などで222億ユーロの巨額の特別損失を計上すると発表。カルロス・タバレス前CEOの時代に計画されたラム1500EVなどのEVは撤回、もしくは大幅縮小し、PHEVセグメントでトップを誇ったジープのラングラーやグランドチェロキーも2025年モデルで販売終了となりました。
トランプ政権でのEV政策の逆回転
バイデン政権下で2023年1月から始まった最大7500ドルのEV/PHEV補助金の効果もあって、2024年にシェア8.1%(130万台)までEV市場は成長したものの、「遠くへ行けないEVの強制はNO!」「(石油を)掘って、掘って、掘りまくれ」と喚呼したトランプ大統領は、着任早々にEV支援策の撤回に着手。2025年4月には「大きな美しい法案(One Big Beautiful Bill Act)」が議会で可決され、同年9月末でEV購入補助金の終了や、充電インフラ建設の補助金の終了が決定。また、CAFEの大幅緩和や未達成の自動車メーカーへの罰金の廃止も決まりました。
6月には、1970年代から独自の厳しい排出ガス規制を設定しているカリフォルニア州の権限を剥奪とする法律も可決され、ゼロエミッション車の義務付け(ZEV法)や同州独自の排出ガス規制(ACC II)も無効とされたのです(加州はすぐに連邦政府の決定を提訴)。それに追い討ちをかけたのが、今年2月にEPA(米国環境保護庁)がCO2排出規制の根拠としていた2009年の温暖化ガスの危険性認定(endangerment finding)の撤回で、米国のCO2関連の規制はほぼ根こそぎ棄却(or 換骨奪胎)されたことになります。
このような温室効果ガス抑制やEVシフトに向けた政策の巻き戻しにより、2030年のEV市場はバイデン政権が目指したシェア50%から大きく後退して、19〜27%の範囲にとどまると予測されています。
EVは雌伏から捲土重来を期す
2026年のEV販売は前年からさらに減少すると見られ、2年程度は低空飛行が続きそうですが、EV損失の痛手を被った自動車メーカーはEVシフトを諦めたわけではなく、市場環境を注視しながら次の一手を進める意向です。
フォードが次に導入するEVは、開発中の「ユニバーサル EVプラットフォーム」による中型ピックアップでケンタッキー州ルイビル工場で2027年に生産が始まります。それまでは、マスタング マッハEと商用バンのEトランジットのみとなりますが、EVに代えてF150や小型ピックアップトラックの「マーベリック」で好評を得ているHEVやEREVを新たに導入していく方針です。
ジム・ファーリーCEOは決算会見で、好調な商用車部門(フォードプロ)とエンジン車部門(フォードブルー)の業績がEV部門(フォードe)の赤字を埋めて、2026年度は80〜100億ドルの営業利益を上げると述べました。同社は2029年頃にフォードeの黒字化を見込んでいます。
