4月の上海訪問では、同市から170km北西の常州市にあるBYDの完成車工場と販売店を訪れる機会がありました。直近の5年間で販売台数を10倍に伸ばして427万台(2024年)とし、一気にホンダや日産を抜き去って世界第7位の自動車メーカーに躍り出たBYDは、近年の自動車産業史に例をみないスピードで成長を続けています。日本でも軽自動車市場に参入することを表明した同社ですが、ここでは現地の生産工場や販売店で目にした最新の状況を報告します。(タイトル写真:上海モーターショーで展示されたBYDの「漢(ハン)L 黒神話:悟空」。大人気のアクションゲームのタイトルにちなんだ特別モデルで、EV仕様は1000馬力、最高速は300km/h超え)

レベル2のADASを標準装備してライバルを引き離す

BYD恐るべし、は充電器だけではありません。同社は2025年2月に、「電動化から知能化のフェーズに入った」といわれるNEVに、自社開発のADASシステムを標準搭載すると発表しました。基本となるシステムは、カメラ12個、レーダー5個、超音波センサー12個を備えた「天神之眼C」で、これを追加コストなしで7万元(140万円 ※)を切る小型車の「シーガル(海鴎)」から搭載するという発表は、同業他社に衝撃を与えました。
※1元=20円で計算。以下、同。

これまでは、レベル2以上のADASはおおよそ15万元(300万円)以上の車種に数万元の追加コストでオファーというのが一般的だったからです。上位システムの「天神之眼B」は、ライダー(LiDAR)1機を追加してハンズオフの「レベル2+」の機能をBYDブランドの上位車種やプレミアムの「デンザ(騰勢)」に搭載し、さらに高級車の「ヤンワン(仰望)」には、ライダー3個で「レベル4」の自動運転に近い性能を実現する「天神之眼A」が付く構成になっています。

EVやPHEVで「電比油低(電動車はガソリンエンジン車よりも安い)」を推進してきたBYDは、「God’s Eye(天神之眼)」と称するADASを低価格で提供することで、プライスリーダーとしての立場を一段と強化する策に打って出たわけです。

訪れた常州市の販売店の店内でも、7万9800元(約160万円)のPHEVのベストセラー「秦Plus」が政府の補助金やインセンティブで6万9800元(約140万円)で買えることを壁面に大きく表示し、「元Plus」や「漢」も主要機能と価格が大書されたポップが立ち、コストパフォーマンスの高さをアピールしています。

店舗への集客は、販売スタッフが日に2本程度配信する動画がメインで、モーターショー会場でもスマートフォン片手にクルマを解説する若い男女が引きを切らないことからも、中国におけるクルマ情報の流通が圧倒的に動画になっていることがわかります。

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