2025年1月8日(日本時間)、米ラスベガスで開幕したCESは、予想どおりAI一色の様相を呈していました。スマートホームやSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)など、メガOEMやティア1サプライヤーの展示内容そのものは前年と大きくは変わらなかった印象ですが、2024年よりも一層AIにフォーカスした印象です。自動車においては、大規模言語モデル(LLM)と生成AIによるIVI(イン・ヴィークル・インフォテイメント)と自動運転(AV=Autonomous Vehicle)への流れが加速し、これから実装されていく技術がより明確になってきました。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの基調講演では、AVとヒューマノイドが当たり前になる未来が提示され、自動運転車の実現性への期待が高まりました。フアン氏の講演とADASの老舗であるモービルアイやロボタクシーのトップランナー ウェイモの展示などから、AVの現在地について読み解いてみます。(前編・後編にわけて掲載します。本記事は前編)
ヒューマノイドがSFから現実のものに?
さらに、3つ目の変革としてフアン氏が紹介したのは、ヒューマノイドロボットでした。
舞台にはボストンダイナミクスなど14体のロボットが登場し、その真ん中に立ったフアン氏は、空間上の動きをキネマティックに把握するオムニバースを新開発のコスモスによって3次元のリアル動画に変換することで、AIがこれを学び、人間の動作を習得できるというのです。
これは、テスラのイーロン・マスク氏が自動運転車のAIが人型ロボット「オプティマス」の頭脳にそのまま使用できると話していたのを思い起こさせますが、マスク氏の発言がフアン氏によってより大きな時間軸の中で位置付けられ、将来的にはヒューマノイドが、製造業の現場で人間のワーカーにとって変わる未来がそう遠からず現実になると思わせました。
人間より賢いAIエージェントと、最後の砦である身体的作業もヒューマノイドに取って代わられるとすると、一体人間の存在価値はどこにあるのか。思わずSF映画で描かれる「人間は、AIを命令できる高等人間と、ロボット以下のサブヒューマンに分断」というディストピアが頭をよぎってしまったのも事実です。