2025年1月8日(日本時間)、米ラスベガスで開幕したCESは、予想どおりAI一色の様相を呈していました。スマートホームやSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)など、メガOEMやティア1サプライヤーの展示内容そのものは前年と大きくは変わらなかった印象ですが、2024年よりも一層AIにフォーカスした印象です。自動車においては、大規模言語モデル(LLM)と生成AIによるIVI(イン・ヴィークル・インフォテイメント)と自動運転(AV=Autonomous Vehicle)への流れが加速し、これから実装されていく技術がより明確になってきました。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの基調講演では、AVとヒューマノイドが当たり前になる未来が提示され、自動運転車の実現性への期待が高まりました。フアン氏の講演とADASの老舗であるモービルアイやロボタクシーのトップランナー ウェイモの展示などから、AVの現在地について読み解いてみます。(前編・後編にわけて掲載します。本記事は前編)

フィジカルAIの時代の到来を宣言

今回のフアン氏の講演の最大のポイントは、「フィジカル(物理的)AI」の時代がついにやってきたというものでした。ここで、実装した例として挙げられたのは、KIONという倉庫管理システムを提供する会社とアクセンチュアがNVIDIAのオムニバース(ominiverse)とコスモス(cosmos)という物理空間をシミュレーションするプラットフォームを使って、アマゾンのような倉庫の物品の出し入れや在庫管理を完全に自動化するモデルです。

すでに、自動車工場でも自動部品搬送車や工場設計でのデジタルツインの導入は始まっていますが、このモデルで設計すれば、フォークリフトや多くの人手を必要とする倉庫の運営と管理は完全に自動化が可能になります。

画像: オムニバース/コスモスで、倉庫の管理の自動化、効率化をデジタルツイン上で設計できる。 youtu.be

オムニバース/コスモスで、倉庫の管理の自動化、効率化をデジタルツイン上で設計できる。

youtu.be

自動運転でもNVIDIAが覇権を握る?

2つ目の自動運転車(AV)に関しては、フアン氏は、同社の最新のSoC(システム・オン・チップス)であるDrive AGX Thorは、従来のチップセットであるDrive Orinの20倍の性能を持ち、エンドツーエンド(E to E)のプロセッシングと生成AIに対応しており、自動運転ソフトウェアの開発を飛躍的に効率化し、スピードアップすると語りました。

すでにレベル3の条件付き自動運転車をドイツと米国のカリフォルニア州やネバダ州で実装しているメルセデス・ベンツ Sクラスは、NVIDIA Drive Orinを採用していますが、米国では新興EVメーカーでフォルクスワーゲンが出資したリヴィアン(Rivian)や自動運転トラックの運行を2025年に開始する独コンチネンタル(Continental)と米AVソフトウェア会社のAuroraの連合、中国のBYDやシャオペン(Xpeng)、ジーカー(Zeekr)などの躍進する自動車メーカーもNVIDIA製チップを搭載しており、それに加えてトヨタも次世代車にDrive Thorを採用すると、フアン氏は誇らしげにアナウンスしました。

NVIDIAのチップと開発プラットフォームを使えば、既存のドライブデータから新たなドライブシチュエーションを人工的に合成できるため、膨大な量のドライブデータを採集しなくても、無限に運転状況を学習していくことが可能になります。世界中のデータセンターに生成AI向けSoCを供給するNVIDIAの独壇場が、AVにおいても起こることを想像させました。

This article is a sponsored article by
''.