2024年11月21日、ホンダは「夢の次世代電池」とも呼ばれる車載用全固体電池の量産化に向けたパイロットラインを公開した。国内自動車メーカーでは、日産自動車に次ぐお披露目となる。車載用の全固体電池は、トヨタを筆頭に日本勢が圧倒的な優位にあると言われているが、世界的な開発競争の激化により、あと数年で量産車への搭載が始まるという予測も現実味を帯びてきた。(タイトル写真はホンダが全固体電池を初搭載するとみられるスーパースポーツカーのコンセプトカー)

「夢の次世代電池」と呼ばれたのも過去の話になる

リチウムイオン電池をごく簡単に言えば、電解質のなかをイオンが移動することによって充放電する仕組み。現在主流の電解質は液体(有機溶媒)であり、液漏れや可燃性など安全性、安定した充放電の温度範囲の狭さほか数々の課題を残している。この電解質に液体ではなく固体を用いたのが「全固体電池(Solid-state battery)」だ。つまり、全固体電池とは、リチウムイオン電池の新たな仕組みである。

画像: 全固体電池の構造イメージ。黄色の部分が固体電解質だ。(図はトヨタ自動車作成)

全固体電池の構造イメージ。黄色の部分が固体電解質だ。(図はトヨタ自動車作成)

全固体電池は研究室レベルでは以前より知られていたものの、長いあいだ実用化は不可能と考えられてきた。しかし、2011年に液体電解質を上回るイオン伝導率の固体電解質が発見されて以降、その実用化に向けてさまざまな業界で研究開発が本格化。すでに電子機器やモバイル機器の一部に採用が始まっている。この分野では、日本電気硝子、TDK、マクセル、村田製作所ほか、日本のメーカーが大きくリードしている。

液漏れの心配がない全固体電池は、高温でも安定した充放電能力を発揮するうえ、発火リスクも大幅に低減。さらにエネルギー密度が高いので航続可能距離が長くなるとともに、充電に必要な時間は大幅に短縮できる。また、正極と負極を分けるセパレーターが不要なので設計自由度が高くコンパクト化できるなど、電動モビリティに最適な電池だ。しかし、頻繁な充放電と振動による固体電解質の亀裂発生、電極との密着性劣化など、多くの課題があった。それゆえ、自動車業界では長年「夢の次世代電池」と呼ばれ、量産化に成功したメーカーが世界の市場を制すとまで言われてきた。

This article is a sponsored article by
''.