フォードは、同社の最量販EVである「マスタング マッハE」の2024年モデルに、車高を高めたラリーバージョンを開発、このほど本格的なデリバリーを開始しました。テスラを筆頭にEV販売の減速が伝えられる米国ですが、フォードはEVへの投資を遅らせる一方で、今回のラリーモデルのような車好きに刺さるモデルも開発しています。また、ステラティス傘下のジープやダッジも初のEVを今秋導入します。こうしたスペシャルティーの高いモデルが、EVが市場に浸透するのに一役買うことが期待されます。(タイトル写真はフォードマスタング マッハE ラリー。同社メディアサイトより)

ジープやダッジも初のEVを投入

これまでプラグインHEVは投入してきたものの、EVに関しては慎重だったステランティス傘下のジープやダッジも、今秋投入するEVを正式に発表しました。ジープは、プレミアムSUVである「グランドワゴニアS」とタフな踏破性能が売りの「リーコン」を、ダッジはスペシャルティークーペの「チャージャー」のEVモデルを今秋発売します。

ジープブランドは、チェロキーやラングラー、レネゲードなどの多彩な車種を展開して、2018年には米国で97万台を販売する人気を誇りましたが、昨年は64万台まで減少しています。往年の名車のEVとして新開発された「グランドワゴニアS」は、テスラ モデルYをライバルと見立て、0→60マイル加速3.4秒など同車を上回る動力性能やオフロード性能をアピールしています。また、31インチタイヤを履き「ロック(Rock)」モードを備える「トレイルホーク(Trailhawk)コンセプト」も発表しており、冒険心溢れる富裕層の心を掴みそうです。

画像: これまでのグランドワゴニアはフルサイズSUVだが、EVのワゴネアSは全長4.88mとグランドチェロキーより短い。600馬力のAWDで航続距離は300マイルを超える。価格は71,995ドルから。(写真は同トレイルホークコンセプト)

これまでのグランドワゴニアはフルサイズSUVだが、EVのワゴネアSは全長4.88mとグランドチェロキーより短い。600馬力のAWDで航続距離は300マイルを超える。価格は71,995ドルから。(写真は同トレイルホークコンセプト)

また、ダッジ チャージャーは、シボレー カマロやフォード マスタングと並ぶ、いわゆるアメリカのマッスルカーの代表株です。EVに生まれ変わった新型は、最大800馬力を超えるV8スーパーチャージャーエンジンの排気音を電子的に生成し、ギアチェンジを擬似的に再現した機構を盛り込むなど、こちらはガソリン車のマッスルカーの特徴を移植していますが、ファンの関心を呼ぶことは間違いないでしょう。

画像: ダッジ チャージャーデイトナは670馬力、0→60マイル3.3秒の性能を誇る。2024年内に2ドアが2025年に4ドアモデルが投入されるがV6ガソリン車も用意される。「バックトゥー・ザ・フューチャー」のように1910年にタイムスリップしてダッジ兄弟に会うアンベール動画も面白い。

ダッジ チャージャーデイトナは670馬力、0→60マイル3.3秒の性能を誇る。2024年内に2ドアが2025年に4ドアモデルが投入されるがV6ガソリン車も用意される。「バックトゥー・ザ・フューチャー」のように1910年にタイムスリップしてダッジ兄弟に会うアンベール動画も面白い。

趣味性の高いモデルがEVの浸透を助ける

テスラ モデルYも、価格がガソリン車と同等レベルまで下がりコモディディ化してきた印象がありますが、EVは一般的には価格がまだ割高なことに加え、充電インフラや再販価値への不安がネックとなって、一足飛びにメインストリームのSUVやクロスオーバーのユーザーが選ぶにはハードルが高い現実があります。

GMのシボレー ブレイザーやイクイノックス、現代 KIAのアイオニック5やEV6、トヨタのbZ4Xなどの量販型SUVも徐々に販売を伸ばしていくでしょうが、最近はハイブリッド車やプラグインHEVの人気が高まっています。

そうした中で、マッハEやチャージャーのようなスペシャルティーカーは、モデル自体の個性が強いため、EVであることのハードルがむしろ低いかもしれません。こうしたモデルを通して、EVが市場に浸透していく様が想像できるような気がします。(了)

●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。

This article is a sponsored article by
''.