EV販売で全米第2位のフォード
マスタング マッハEは、言わずと知れたフォードのアイコン的なスポーティクーペ「マスタング」の名を冠した同社初のEVとして新開発され、2021年に発売されました。クーペスタイルのボディを流行りのクロスオーバースタイルに仕立てた4ドア車で、サイズ(4.74×1.88×1.61m)もEV販売No.1であるテスラ モデルYとほぼ同じです。2023年の販売台数は40,771 台で、モデルY(39万台)、モデル3(22万台)、昨年で生産を終了したシボレー ボルト(6万台)に続く全米EV販売第4位であり、累計でも12万台以上販売しています。フォードは、マッハEの他にF150ライトニングと商用バンのEトランジットを販売しており、EV販売では2年連続でテスラに次ぐ全米No.2ブランドです。
そのマッハEですが、今年1月の米国政府のEV補助金ルールの厳格化で、それまでの3,750ドルの補助金が適用されなくなり苦戦が予想されていましたが、2月に価格を一挙に最大8,100ドル下げると販売が勢いを取り戻し、今年1〜3月では9,589台(前年同期比+77%)と好調を維持しています。2023年モデルは、現在も72ヶ月(6年)ゼロ金利という破格の条件で在庫一掃を図っていますが、ここに来て注目されるのは、オフロードの走行性能を高めたラリー(Rally)が追加されたことです。価格は59,995ドルからで、売れ筋のプレミアム(43,995ドル)やGT(53,995ドル)より上位に位置します。
ラリー競技の伝統を受け継ぐ
マッハEラリーは標準モデルより地上最低高を1インチ(2.54センチ)上げてグランドクリアランスを拡大。瞬時にダンパーの減衰力をコントロールする「マグネライド」を装備し、ヨーの発生量を大きくしてテールスライドしやすくしたドライブモード「ラリースポーツ」を設定することで、オフロード走行を楽しくしたチューニングを施しています。この辺りは、フォード フィエスタやフォーカスRSなどで世界ラリー選手権(WRC)で活躍した歴史をもつフォードの真骨頂で、ラリーファンやアウトドアスポーツの愛好者の心に刺さるモデルと言えそうです。
同社のプロモーションビデオでは、MTBクロスカントリーの全米女子チャンピオンを起用して、湖畔のカフェにマッハEラリーで全速力で向かい(途中からはMTBで)森の中を疾走するシーンを見せるなど、ワクワクさせる演出も怠りありません。また5月に行われたプレス向け試乗会は、深い森林と高山のあるワシントン州で実施され、ダートコースをドリフトしながら性能を楽しむメディアの様子が動画サイトなどに上がっています。
このように「EVか内燃機関車か」という視点ではなく、車によって可能になる豊かなライフスタイルを訴求したモデルが登場することは、EVの裾野を広げていくことになりそうです。