フォードは、同社の最量販EVである「マスタング マッハE」の2024年モデルに、車高を高めたラリーバージョンを開発、このほど本格的なデリバリーを開始しました。テスラを筆頭にEV販売の減速が伝えられる米国ですが、フォードはEVへの投資を遅らせる一方で、今回のラリーモデルのような車好きに刺さるモデルも開発しています。また、ステラティス傘下のジープやダッジも初のEVを今秋導入します。こうしたスペシャルティーの高いモデルが、EVが市場に浸透するのに一役買うことが期待されます。(タイトル写真はフォードマスタング マッハE ラリー。同社メディアサイトより)

EV開発の手は緩めていない

フォードは、同ブランドの看板モデルであるマスタングやF-150ピックアップトラックにいち早くEVを設定した点で、GMやステランティスよりも大胆にEVシフトに取り組んできたと言えるかもしれません。昨年後半からEV販売のペースが減速したことを受けて、フォードはテネシー州に建設中のブルーオーバルシティ(※1)での次世代EVトラックの生産立ち上がりを2026年に遅らせ、ミシガン州に建設を開始したバッテリー工場の規模を縮小するなどEV投資のスピードを調整するとともに、ハイブリッド車を強化する計画を発表しています。これらはEV事業部門で今年50億ドルの赤字見込みという状況からみて当然の修正でしょう。※1:車載電池工場を含め114億ドルの巨費を投じるフォードのEV一貫生産拠点の呼称

画像: フォードはテネシーのブルーオーバルシティに加えて、オハイオ州の商用車工場も次期EVモデル生産に向けて拡張中。

フォードはテネシーのブルーオーバルシティに加えて、オハイオ州の商用車工場も次期EVモデル生産に向けて拡張中。

こうした逆風下でも、フォードがマスタング マッハEのラリーモデルを開発して、このモデルの魅力を広げようとしているのは注目に値します。マッハEラリーは、フォードCEOのジム・ファーレイの「オフロードの空間で際立って見える車を迅速に開発してほしい」という要請を受けて約一年で開発されたといいます。マッハEのチーフエンジニアのドナ・ディクソン氏は、「EVにまだ戸惑っている人たちも、この車が草場やダートを走破する姿を見れば『こんなこともできるんだ』と魅力を感じるでしょう。EVはどんなライフスタイルにも適合できることを感じて貰えるはずです」と語っています(※2)。※2:米オートモティブニュースの記事による。

画像: マスタング マッハEラリーのインテリア。中央の15.5インチ縦型ディスプレイに操作を集めたインフォテイメントはOTAアップデートに対応。

マスタング マッハEラリーのインテリア。中央の15.5インチ縦型ディスプレイに操作を集めたインフォテイメントはOTAアップデートに対応。

SUVやクロスオーバーが全盛の昨今の自動車マーケットですが、アウトドアのギアを積むSUVの荷室スペースは欲しいが、普段の街乗りにはボディの大きさや重心の高さ、車重が気になるという人もいます。そうしたドライバーには、アウディのオールロードクワトロやスバル アウトバックのような車高の高いステーションワゴンや、マッハEラリーのようなオフロードでも安心してアクセルが踏めるクロスオーバーが選択肢になりそうです。

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