この先3〜5年で海外ブランドのシェアは10%に下落!?
北京の路上で10年前はまだ見かけたVWのサンタナや古いジェッタを見ることはもうありません。ビュイックやフォード、テスラなどのアメリカ車、メルセデスやBMW、アウディ、ポルシェ、VW などのドイツ車、ボルボやランドローバー、トヨタや日産、ホンダなどの日本車、ヒュンダイやKIA、そしてこれらに混じって存在感を高めている様々な中国産ブランド車。これほど多くの種類の車が走っている市場は世界でも例をみないでしょう。
ナンバープレートは、エンジン車が青色、NEVが緑色と一目で区別できます。渋滞が激しい北京市内は新規でナンバープレートを取得するには10年以上かかるそうで、その点、年に2回抽選がある緑プレートの方がまだ取れる可能性があるそうで、それもNEVを推進する政策の一環です。
BYDの王伝福会長は、3月末の投資家向けセミナーで、「この先3〜5年で、輸入ブランドのシェアは10%まで下落するだろう」と発言して、外国メーカーの背筋を寒からしめました。同会長は、モーターショー会場から帰路に地下鉄を利用する庶民的な人柄で決して煽るつもりではなかったのでしょうが、もし本当にその通りになったら、欧米やアジアのメーカーの多くが中国市場で大幅な事業縮小や撤退を余儀なくされることになります。VWなどが中国の開発体制を強化し、小鵬や上海汽車などのプラットフォームを利用するのは、これら中国ブランドの開発力やスピードを身に沁みて実感しているからに他なりません。
北京の朝夕の渋滞は相変わらず酷いもので、ホテルからモーターショー会場まで通常クルマで30分のところが3倍近くかかったり、交差点では右・左折の車が歩道の歩行者や自転車の間に鼻をねじ込んできます。日本人なら睨みつけそうな割込みや合流が彼らにとっては当たり前です。一方で、夜間でも治安はよく、歩道の至る所にあるレンタルサイクルで深夜近くでも女性が一人で移動しています。自動車産業の歴史の中でも類を見ない熾烈な競争が、短期間のうちに展開されているダイナミックな中国市場からしばらくは目が離せなくなりそうです(了)
●著者プロフィール
丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意−混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。